フェルディナント・マリア (バイエルン選帝侯)

フェルディナント・マリア：バイエルン選帝侯としての生涯

フェルディナント・マリア（Ferdinand Maria, 1636年10月31日 - 1679年5月26日）は、17世紀のバイエルン選帝侯であり、その治世（1651年 - 1679年）は、三十年戦争後の荒廃からの復興と、文化・経済の発展に特徴づけられます。父はマクシミリアン1世、母は神聖ローマ皇帝フェルディナント2世の娘マリア・アンナという、名門の血筋を受け継いでいます。

生涯

1650年、フェルディナント・マリアはサヴォイア公ヴィットーリオ・アメデーオ1世の娘、エンリエッタ・アデライデと結婚しました。この結婚を通じて、後のバイエルン選帝侯マクシミリアン2世エマヌエル、フランス王太子ルイ（グラン・ドーファン）妃となったマリア・アンナを含む、7人の子供をもうけています。1651年に父が亡くなると、彼は若くして選帝侯の地位を継承しました。当初は叔父であるロイヒテンベルク公アルブレヒト6世が1654年まで摂政を務め、彼を支えました。

1657年、神聖ローマ皇帝フェルディナント3世が崩御し、帝位が一時的に空位となると、フランス宰相マザランから皇帝に即位するよう勧められます。しかし、彼はこの申し出を拒否し、翌1658年にレオポルト1世が皇帝に即位しました。外交においては、1662年から1664年のオスマン帝国との戦争にバイエルン軍を派遣する一方で、フランスとの提携も重視しました。1672年からのオランダ侵略戦争では中立を維持し、娘マリア・アンナをフランス王ルイ14世の王太子に嫁がせることで、フランスとの関係を強化しました（ただし、この結婚が実現したのはフェルディナント・マリアの死後、1680年のことです）。

内政においては、三十年戦争によって荒廃したバイエルンの復興に力を注ぎました。農業と産業の奨励、教会や修道院の修復、そして軍の近代化を積極的に推進しました。また、ミュンヘンに壮麗なニンフェンブルク宮殿を建設し、音楽家のヨハン・カスパール・ケルルやアゴスティーノ・ステッファーニを庇護するなど、文化的な貢献も忘れてはなりません。

1679年、フェルディナント・マリアは42歳という若さでこの世を去りました。彼の後を継いで息子のマクシミリアン2世エマヌエルが選帝侯となりましたが、幼少であったため、弟のマクシミリアン・フィリップ・ヒエロニムスが摂政として政治を補佐しました。

子女

マリア・アンナ（1660年 - 1690年）：フランス王太子ルイ（グラン・ドーファン）妃
マクシミリアン2世エマヌエル（1662年 - 1726年）：バイエルン選帝侯
ルイーゼ・マルガレーテ（1663年 - 1665年）
ルートヴィヒ・アマデウス・ヴィクトル（1665年）：夭逝
カイェタン・マリア・フランツ（1670年）：夭逝
ヨーゼフ・クレメンス・カイェタン（1671年 - 1723年）：ケルン大司教
* ヴィオランテ・ベアトリクス（1673年 - 1731年）：トスカーナ大公世子フェルディナンド・デ・メディチ妃

フェルディナント・マリアの治世は、バイエルンの復興と文化の発展に大きく貢献しました。彼の政策は、その後のバイエルン選帝侯国に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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