フェンダー・スウィンガー

フェンダー・スウィンガー：短命に終わった幻のエレキギター

フェンダー・スウィンガーは、1969年、フェンダー社によって世に送り出されたエレクトリックギターです。しかし、その生産期間は非常に短く、市場に出回った数も少ないことから、幻のギターとしてコレクターの間で高い人気を誇っています。

意外な誕生秘話：在庫部品の寄せ集め

このギターの起源は、1965年にフェンダー社を買収したCBS社にあります。CBS社は、工場に眠る在庫資材の有効活用を図るべく、既存の部品を組み合わせた新しいモデルの開発に着手しました。スウィンガーはその試みの一つであり、ベースVのボディとミュージックマスターの部品を流用して作られたと言われています。いわば、計画性のない、いわば「寄せ集め」で作られたギターだったのです。

同じような経緯で生まれたモデルとして、フェンダー・カスタム（マーヴェリックとして知られる）があります。これらもまた、安価でショートスケールのスチューデントタイプギターとして企画されたものの、商業的な成功は収めませんでした。スウィンガーもまた、真剣に販売されたわけではなく、人気を獲得することもなく、短命に終わる運命を辿ったのです。

意外な使用者：著名ミュージシャンの愛用

しかし、その知名度の低さとは裏腹に、スウィンガーは一部のミュージシャンから高い評価を受けています。トーキング・ヘッズのベーシスト、ティナ・ウェイマスは、映画『ストップ・メイキング・センス』でのライブパフォーマンスでスウィンガーを使用し、その存在を広く知らしめました。また、シンガーソングライターのベン・クウェラーも愛用者の一人で、彼のセルフタイトルアルバムの多くの楽曲でスウィンガーが使用されています。これらの著名なミュージシャンがスウィンガーを選んだ理由は、その独特の音色や演奏性にあると言えるでしょう。

製造年代の謎：部品の刻印から読み解く

スウィンガーは、既存の部品を寄せ集めて作られたため、各部品に刻印された製造年月日は、ギター全体の製造年月日とは一致しません。例えば、ネックには1966年の刻印がされている場合もあります。しかしながら、スウィンガー自体の製造は、1969年に集中していたと考えられています。この点も、スウィンガーの希少性を高める一因となっています。

そしてコレクターズアイテムへ

生産数の少なさ、そして著名ミュージシャンによる使用、そしてその誕生秘話など、数々の要因が重なり、今日、フェンダー・スウィンガーはコレクターズアイテムとして高い価値を持つに至っています。その独特のルックス、そして演奏性、そして謎めいた歴史は、多くのギター愛好家を魅了し続けています。 入手困難なギターであるため、所有することはまさに名誉と言えるでしょう。 その音色は、多くの音楽ファンに伝説として語り継がれるに違いありません。

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