フェーズドアレイレーダー

フェーズドアレイレーダーの概要

フェーズドアレイレーダー（Phased Array Radar、PAR）は、位相制御の技術を用いた先進的なレーダーシステムです。このレーダーは、フェーズドアレイ型アンテナを搭載し、特に目標の探知や追尾機能において多くの利点を有しています。

基本概念と動作原理

フェーズドアレイレーダーは、複数のアンテナ素子を用い、それぞれの励振信号の位相を調整することで、ビームの指向を変化させます。この方式は、従来の周波数走査（FRESCAN）方式とは異なり、位相制御によってより自由にビーム走査を行うことが可能です。1970年代からの技術進歩により、フェーズドアレイレーダーは主流の3次元[[レーダー]]技術として確立されました。

従来のレーダーは、機械的な駆動装置を利用してビームを移動させる方式が一般的でしたが、フェーズドアレイレーダーでは電子的にビームを制御することができ、これによりスピードや機能性が大幅に向上しました。

アンテナ方式

フェーズドアレイアンテナには、主にパッシブ式とアクティブ式の2種類があります。パッシブ式では、アンテナ素子に移相器が内蔵され、送受信機は1組となります。この方式は、耐電力性に優れていますが、信号損失の問題や送信機が故障すると全機能が失われる欠点があります。

一方、アクティブ式では各アンテナ素子ごとに独立した送信機と受信機を備えるため、システム全体に対する耐障害性が高まり、小さな送信電力でも大出力を得ることが可能です。この構成により、故障が発生してもレーダーの機能が保持されやすくなります。

ロットマンレンズ方式もフェーズドアレイレーダーの一環であり、誘電体レンズを利用した位相制御が特徴的です。これにより、広帯域の電子機器への適用性も高まります。

ビーム走査方式

ビーム形成には主にABF（アナログビーム形成）とDBF（デジタルビーム形成）があり、DBF方式は同時に複数のビームを形成することで、性能の向上を図ることができます。これにより、データ取得効率が大幅に改善され、複数の目標に対して同時に追尾が可能となります。

特徴と利点

フェーズドアレイレーダーの導入によって、いくつかの重要なメリットが得られます。

1. 多機能同時処理: 複数の目標を同時に追尾することができ、効率的な捜索と追尾を実現します。
2. 機械的部分の排除: 機械的駆動装置が不要なため、信頼性が高まり、重量軽減にも寄与します。
3. ビーム形状の柔軟性: 捜索、追尾に応じたビーム形状の変化が容易です。
4. データ取得率の向上: 高速でのビーム走査により、探知精度の向上が図れます。
5. リアクションタイムの短縮: 電子的にビームを安定させることで、迅速な指向が可能です。
6. 電子防護能力の強化: 妨害信号に対する抵抗力が向上します。
7. 抗堪性の向上: 多数のアンテナ素子を利用するため、部分的な損傷にも耐えられます。

結論

フェーズドアレイレーダーは、その先進的なビーム制御技術により、従来のレーダーシステムに対する多くの利点を提供します。防空や航空機、地上支援、そして気象観測においても広く利用されており、その技術的進歩が今後の技術発展に大きく寄与することが期待されます。

もう一度検索