フェーズ理論

フェーズ理論とは

フェーズ理論は、人間の意識状態を5つの段階に分けて捉える考え方です。特に、工場などの安全管理分野で、作業中のヒューマンエラーを減らすための指標として活用されています。この理論では、意識レベルが上がるほど集中力と緊張感が高まるとしています。

5つのフェーズ

フェーズ0：無意識状態

意識が全くない状態。脳が活動していない状態です。
一般的に「無意識状態」や「失神状態」として知られています。
生理的には、睡眠中や脳卒中などで意識を失っている状態が該当します。

フェーズI：サブノーマルな状態

意識がぼんやりとしており、注意や判断力が低下した状態です。
間違いを起こしやすく、事故につながる可能性が非常に高い状態です。
疲労時や居眠り中がこれに該当し、居眠り運転による事故はこの状態が原因となります。
危険作業中にこのフェーズに陥った場合は、直ちに作業を中断し、休憩や仮眠を取る必要があります。

フェーズII：リラックスした正常状態

意識は正常レベルですが、リラックスした状態です。
注意力が散漫になりやすく、見落としやミスが発生しやすくなります。
休憩中や安静状態がこれに該当します。
集中力が低い状態であり、重要な作業前には緊張を促す行動でフェーズIIIへ移行する必要があります。
例：指差呼称やKY活動など。

フェーズIII：積極的な正常状態

意識は正常で、脳が活発に活動している状態です。
仕事に集中しており、ミスが少ない状態です。
危険作業中や仕事への意欲が高い時に見られます。
情報処理能力が高く、作業効率が非常に高い状態です。
この状態での作業が望ましいですが、長くは続かないため、意識的に維持する必要があります。
緊張を促す行動でフェーズIIから移行する必要があります。

フェーズIV：過緊張状態

極度の緊張状態であり、パニックに陥りやすい状態です。
注意が狭まり、判断力や記憶力が低下します。
緊急時や予想外の事態で発生しやすく、事故につながりやすい状態です。
この状態を防ぐためには、日頃からの訓練や心の準備が重要です。

安全活動におけるフェーズ理論の応用

フェーズ理論は、特に工場などの危険な作業環境において、作業員の意識状態を把握し、事故を防止するために役立ちます。各フェーズの状態を理解し、適切な対策を講じることで、ヒューマンエラーを減らすことができます。

フェーズI の状態にならないように、十分な休息や睡眠を確保する
フェーズII の状態から、重要な作業前には、フェーズIII に意識を高めるような行動をする。
フェーズIV の状態にならないよう、日ごろから訓練や対策をしておく。

関連事項

安全教育
ヒューマンエラー
危険予知訓練
防災訓練

参考文献

安全人間工学 中央労働災害防止協会(1984)
安全の百科事典 丸善株式会社 (2002)
高圧ガス保安技術 第六次改訂版 高圧ガス保安協会 (2002)

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