フォックス＝ノース連立内閣

フォックス＝ノース連立内閣：アメリカ独立戦争後のイギリス政治と権力闘争

1783年、グレートブリテン王国に、チャールズ・ジェームズ・フォックスとノース卿を支持基盤とする異例の連立内閣が誕生しました。これがフォックス＝ノース連立内閣です。首相にはポートランド公爵が就任しましたが、内閣の主導権を握っていたのはフォックスとノース卿でした。

フォックスはホイッグ党、ノース卿は名目上はトーリー党に属していましたが、どちらも直前のシェルバーン伯爵内閣には加わっておらず、野党として連携して内閣を倒しました。しかし、この連立は国王ジョージ3世の強い反発を招きました。ジョージ3世は特にフォックスを嫌悪しており、若きウィリアム・ピット（小ピット）に組閣を打診するも、その時点では成功しませんでした。そのため、ジョージ3世はフォックス＝ノース連立内閣の誕生を阻止できず、パトロネージュ（恩給などによる政治的影響力）の拒否という手段に訴えるしかなかったのです。

この内閣は重要な役割を果たしました。1783年9月3日、アメリカ独立戦争終結を意味するパリ条約を締結したのです。しかし、内閣の安定は長く続きませんでした。当時、イギリス東インド会社は深刻な財政問題を抱えており、フォックスは解決策として同社の国有化を提唱しました。国有化によって政府は、より多くの官職を自由に任命できるようになり、政権維持に繋がるという思惑がありました。

この東インド法案は庶民院を通過しましたが、ジョージ3世は激しい反対を表明し、貴族院に圧力をかけました。ジョージ3世は貴族院議員に対し、法案に賛成すれば敵とみなすと通告したのです。結果、法案は1783年12月17日に貴族院で否決され、ジョージ3世は直ちにフォックス＝ノース連立内閣を罷免しました。こうして、ウィリアム・ピットの第1次ピット内閣が誕生します。

フォックスとノースは罷免後も政治活動を続け、ピットの政策に反対しました。しかし、世論はピットを支持していました。請願やロンドン市民の行動、そして議会での投票結果などが、ピットへの支持を示していました。1784年3月の総選挙では、ピット率いる与党が圧勝しました。フォックス＝ノース連立内閣は、国王の強い意志と世論、そして政治的駆け引きによって短命に終わったのです。この内閣の崩壊は、イギリス政治における国王と議会、そして政治家の間の複雑な力関係を示す象徴的な出来事となりました。また、東インド会社問題という重要な課題への取り組みとその挫折は、イギリス帝国の将来に大きな影を落としました。さらに、この出来事は、小ピットという後のイギリス政治を代表する人物の政治的キャリアの出発点にもなりました。

内閣閣僚一覧

（資料不足のため、内閣閣僚の一覧は割愛させていただきます）

参考文献

Black, Jeremy (2006). George III: America’s Last King. Yale University Press.
Pares, Richard (1953). King George III and the Politicians. London.
Trevelyan, George Otto (1912). George the Third and Charles Fox: The Concluding Part of the American Revolution. 2 vols.
Watson, J. Steven (1960). The Reign of George III, 1760–1815

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