フォトキナ

フォトキナ (Photokina)

フォトキナは、かつてドイツのケルンにおいて、およそ2年に一度開催されていた国際的な写真および映像関連製品の総合見本市です。ケルンメッセを会場とし、通常は西暦の偶数年にあたる9月に開催されていました。

このイベントは、カメラやレンズといった写真機材のみならず、幅広い映像関連技術やサービスを一堂に集める場として、世界最大級の規模を誇っていました。世界各国から多数のメーカーが出展し、その数は2004年には50ヶ国以上に及びました。特に、日本のCP+やアメリカのフォト・マーケティング・アソシエーション・トレードショーと並び、写真業界における最も重要な展示会の一つと見なされていました。

フォトキナは、各社が最新の技術や革新的な製品、あるいは将来を見据えたコンセプトモデルを発表する絶好の機会でした。そのため、次の2年間における機材開発の方向性や業界全体のトレンドを予測する上で、非常に重要な指標とされていました。一般のバイヤーだけでなく、各メーカーの開発担当者からも高い関心を集め、ビジネスと技術の両面で重要な役割を果たしていました。日本からも多くの企業が出展し、また多数の関係者が視察のために訪れていました。

興味深い点として、東西冷戦時代においても、政治体制の違いを超えて多くの国々が参加していたことが挙げられます。当時の東ドイツやソビエト連邦といった共産圏諸国も、自国のカメラやレンズ技術をアピールするために積極的に出展していました。

展示内容に関しては、2000年頃からのデジタルカメラの急速な普及に伴い、その幅が大きく広がりました。従来のフィルム写真関連製品に加え、デジタルイメージング、映像編集、プリント技術、モバイルフォトグラフィー関連など、より多様な製品やソリューションが紹介されるようになりました。

歴史

フォトキナの歴史は古く、最初の開催は1950年まで遡ります。その後、回を重ねるごとに規模を拡大し、国際的なイベントとしての地位を確立していきました。1956年の開催時には、当時のアメリカ合衆国大統領ドワイト・D・アイゼンハワー氏から祝電が寄せられるなど、その影響力の大きさがうかがえます。

近年では、特に2008年の開催が過去最大規模となりました。この年、初めて会場がケルンメッセのDeutz地区に移され、46ヶ国から1,579の出展者が参加し、161ヶ国から169,000人を超える訪問者が訪れました。その後の開催も盛況を維持し、例えば2010年には45ヶ国から1,251の出展者と160ヶ国から180,000人以上の訪問者がありました。2012年には訪問者数が185,000人に達し（出展者数は41ヶ国から1,158社）、2014年も185,000人の来場者を記録するなど、多くの業界関係者や写真愛好家が訪れる一大イベントであり続けました。

終焉

フォトキナは、デジタル化の波に対応しつつも、写真・映像業界の構造変化の影響を受けることになります。2018年以降は、より市場のサイクルに合わせた毎年開催への変更が計画されていました。しかし、その後の道のりは平坦ではありませんでした。変更初年度となるはずだった2019年の開催は、準備不足を理由に中止が決定されました。続く2020年も、世界的に拡大した新型コロナウイルスのパンデミックの影響を受け、開催が見送られました。加えて、スマートフォンなどによる写真・映像市場の普及・変化に伴う専門市場の縮小が進み、かつてのような大規模な展示会としての維持が困難となりました。こうした複数の要因が重なり、主催者であるケルンメッセは2020年11月、「追って通知があるまで終了」という実質的なイベントの閉幕を発表しました。

世界最大級の写真・映像見本市として、半世紀以上にわたり業界の発展を牽引してきたフォトキナは、その歴史に幕を下ろしました。多くの革新がここで発表され、無数のビジネスが生まれ、そして写真・映像文化の進化を世界に示してきたその役割は、業界の記憶に深く刻まれています。

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