フォルクスワーゲン・SP2

ブラジルのスポーツカーSP2：開発から衰退、そしてコレクターズアイテムへ

1970年代、ブラジルは輸入規制によりスポーツカー市場が閉鎖的でした。国産車はフォルクスワーゲン「カルマンギア」などごくわずか。この状況の中、フォルクスワーゲン・ド・ブラジルは、サンパウロの頭文字をとった「SP」シリーズの開発に着手します。

プロジェクトX：新たなスポーツカーへの挑戦

1969年、フォルクスワーゲン・ド・ブラジルは、本社から一定の独立性を保ちながら「プロジェクトX」と名付けられた秘密裏の開発計画を開始しました。開発チームは、既存の技術を活かしつつ、ブラジル市場に適したスポーツカーを目指しました。1971年には試作車が発表会に出展されますが、量産化には更なる時間が必要でした。

SP2：量産モデルの誕生と注目

1972年、ついにSP2が発表されました。ベースはヴァリアントのシャーシ、エンジンは排気量1,700ccに拡大された空冷式フォルクスワーゲンエンジンを搭載。75馬力を発揮し、最高速度160km/h、燃費10km/Lを達成しました。国産車に数々の改良を加え、個性的な内装と高い完成度でメディアの注目を集めました。しかし、その性能は必ずしも高いとは言えず、後に「Sem Potência（無馬力）」という皮肉交じりのあだ名まで生まれるほどでした。

競争と衰退：市場での苦戦

SP2は、競合他社のプーマには性能で劣っていました。プーマはグラスファイバーボディで軽量だったためです。また、自社生産のカルマンギアTCとも競合した結果、販売は低迷。1976年2月、カルマンギアTCの生産終了の翌年、SP2の生産も終了しました。総生産台数は10,205台、そのうち670台がヨーロッパに輸出されました。

SP1とSP3：試行錯誤と進化

SP2より前に登場したSP1は、1,600ccエンジンを搭載し、わずか65馬力と非力だったため、すぐに生産中止となりました。SP2の性能不足を解消すべく、改良型のSP3プロジェクトも進行しました。SP3はブラジル版パサートTSの1.8L水冷エンジンを搭載し、100馬力までパワーアップ。しかし、量産には至りませんでした。

コレクターズアイテムとしての価値

生産終了から年月が経ち、SP2は希少な存在となりました。現在では、程度の良い車両は当時の価格をはるかに超える高値で取引され、コレクターズアイテムとして高い価値を認められています。フォルクスワーゲンの博物館には、白いSP2が展示されており、その歴史と希少性を物語っています。SP2は、ブラジルの自動車産業史において重要な位置を占める、独特の個性を持つ一台と言えるでしょう。

まとめ：ブラジルが生んだ個性派スポーツカー

SP2は、限られた市場環境の中で開発された、ブラジル独自のスポーツカーです。その性能は必ずしも優れてはいませんでしたが、独自のスタイリングと高い完成度で多くのファンを魅了しました。そして現在では、その希少性からコレクターズアイテムとして高い評価を受けています。SP2の歴史は、ブラジル自動車産業の挑戦と試行錯誤の物語そのものです。また、SPシリーズの開発は、ブラジルフォルクスワーゲンの技術力と独立性を示す重要なエピソードと言えるでしょう。

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