フォントネーのシトー会修道院

フォントネー修道院：簡素な美と歴史の息づくシトー会修道院

フランスのブルゴーニュ地方、モンバール市郊外にあるフォントネー修道院は、12世紀初頭に建てられたシトー会修道院です。サン＝ベルナール渓谷とフォントネー川の合流点に位置し、緑豊かな自然に囲まれた静寂な環境の中に佇んでいます。シトー会修道院特有の簡素で装飾のない建築様式が特徴で、中世ヨーロッパの修道院建築を知る上で重要な史跡として、世界遺産にも登録されています。

建立からフランス革命まで：栄華と衰退の軌跡

1118年、クレルヴォーのベルナルドゥスによって創設されたフォントネー修道院は、1147年にローマ教皇エウゲニウス3世によって聖別されました。その後、ローマ教皇アレクサンデル3世による勅書で修道院の権利と財産が認められ、修道院長選挙も許可されるなど、順調な発展を遂げます。近隣の鉱物を利用した製鉄業や冶金業も盛んに行われ、経済的な基盤も強固なものとなりました。

13世紀には、ルイ9世による税制の免除や、後のフランス王たちからの寄進によって、王室からの庇護も受けるようになりました。しかし、幾度かの戦争や略奪にも見舞われ、常に安定した状態ではなかったようです。16世紀頃までは繁栄を続けましたが、王室による修道院長選挙の廃止を強制されたことで、次第に衰退の一途を辿ります。18世紀には財政難に陥り、食堂を解体せざるを得ない状況にまで追い込まれ、やがてフランス革命によって、1791年に私有財産として売却されました。

製紙工場から世界遺産へ：奇跡の再生

その後、100年以上に渡り製紙工場として利用された修道院でしたが、1906年にリヨンの銀行家であり芸術愛好家でもあったエドゥアール・エイナールによって買い取られます。エイナールは、1911年までに大規模な修復工事を施し、製紙工場を解体。かつての姿を取り戻すことに成功しました。現在もエイナール家の私有地ではありますが、主要部分は一般公開され、多くの人々に歴史と建築の素晴らしさを伝えています。

見どころ：簡素ながらも荘厳な建築と歴史的遺物

修道院の主要な見どころは、以下の通りです。

修道院付属教会： 12世紀に建設された十字形の教会は、シトー会修道院建築様式を代表するものです。簡素な装飾ながら、その荘厳な雰囲気は訪れる人を圧倒します。内部には、12世紀の聖母子像が安置されています。
教会参事会室： 修道院の運営や決定事項を議論した重要な場所です。中庭回廊に面しており、オジーヴ穹窿（ゴシック様式の丸屋根）が特徴です。
修道士部屋： 写本の作成などを行っていたと推測される部屋で、複数のオジーヴ穹窿で覆われています。
寝室： 2階に位置する寝室は、ベルナルドゥスの戒律に基づき、簡素なつくりになっています。
* 鍛冶場： 修道院が所有する鉱山から採掘した鉱石を加工するための施設で、水車を動力源としていました。

これらの建物以外にも、一般非公開の建物（獄舎、修道院長の住居など）も存在します。フォントネー修道院は、その簡素ながらも美しい建築、そして歴史的意義から、訪れる価値のある場所と言えるでしょう。 中世の修道院生活や、その後の歴史的変遷を想像しながら、静寂に包まれた空間をゆっくりと散策してみてはいかがでしょうか。

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