フクロウオウム

フクロウオウム：飛べない夜行性オウムの生態と保護

フクロウオウム（学名: Strigops habroptilus）、またはカカポは、ニュージーランドにのみ生息する、世界で唯一飛べないオウムです。夜行性で、体重はオウム類の中でも最大級を誇り、非常に長寿であると考えられています。その希少性から、現在では百数十羽ほどしか確認されておらず、個体識別の上で厳重な保護下に置かれています。

生態

フクロウオウムは、太った体格と、飛ぶには不十分な小さな翼が特徴です。竜骨突起が退化しているため、飛ぶことはできませんが、ジャンプ時のバランス維持や、木から降りる際の落下衝撃を和らげるために翼を使用します。地上性生活に適応した結果、飛ぶ能力を失ったと考えられています。

体色はモスグリーンで、背中には黒い縞模様があり、周囲の植物に巧みに擬態します。羽は柔らかく、腹部、首、顔は黄色みを帯びています。フクロウのような平たい顔から、「フクロウオウム」という名が付けられました。地面を歩く際は、くちばしの周囲にある繊細な「ひげ」が地面を感知するのに役立ちます。

視覚に頼らず、発達した嗅覚で餌を探します。これはオウム類では他に例がなく、体から発する強い芳香も大きな特徴です。この芳香は個体識別に役立つと考えられていますが、一方で捕食者を引き寄せることにも繋がり、個体数減少の一因となっています。

食性は草食性で、果実、種子、花粉、樹液などを食べます。特にリムの木の果実を好みます。足を使って葉をつかみ、食べやすい部分だけを食べて、残りは丸めて捨てます。

繁殖

フクロウオウムは、「レック」と呼ばれる独特な繁殖方法を持つ、世界で唯一のオウムです。オスは繁殖期に集会所（レック）を作り、メスを魅了するディスプレイを行います。メスはオスのディスプレイを観察し、つがい相手を選びます。

オスは、丘の上などに「庭」を作り、低周波の唸り声でメスを呼び寄せます。この唸り声は遠くまで届き、一晩に8時間ほども続けるため、繁殖活動には相当なエネルギーを消費します。

メスは1～4個の卵を産み、地上に巣を作ります。抱卵はしますが、餌探しのため卵を離れることもあり、捕食者や凍死の危険にさらされます。孵化したひなは非常に小さく無力で、成長するまで捕食される危険があります。

長寿であるため、繁殖開始は生後9～11年と遅く、繁殖率は非常に低いです。餌となる果実の豊凶にも左右されるため、繁殖は稀です。

環境と生態

フクロウオウムの先祖は、約100万年前にニュージーランドへ渡来しました。当時は飛翔能力を持っていたと考えられていますが、その後、ニュージーランドに哺乳類が少なかったという環境要因によって、地上生活に適応し、飛翔能力を失ったと推測されています。

かつてはニュージーランド全土に広く分布していましたが、人間の活動によって生息数は激減しました。夜行性のため、昼間は茂みに隠れ、夜に活動します。木登りが得意で、高い木にも登ります。

保全

フクロウオウムの個体数は、人間の移住以降、激減しました。ポリネシア人やヨーロッパ人による捕獲、捕食者の侵入、生息地の破壊などが原因です。

1891年から保護活動が行われていますが、決定的な効果が出始めたのは1989年から本格化した「カカポ保護計画」以降です。この計画では、捕食者がいない島への移送、捕食者駆除、補助給餌などが行われました。その結果、個体数は増加傾向に転じましたが、いまだ絶滅危惧種であることに変わりはありません。

現在も、個体数の維持と増加のために、様々な保護活動が続けられています。フクロウオウムの保護は、人間活動が生物多様性に及ぼす影響の大きさを示す象徴的な事例と言えるでしょう。

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