フジシダ

フジシダ（Monachosorum maximowiczii）

フジシダは、コバノイシカグマ科に属する常緑性の小型シダ植物です。その独特な生態と美しい姿で知られています。

特徴

形態: 根茎は短く斜めに立ち、微細な毛で覆われています。葉柄は褐色で光沢があり、ほとんど無毛で5-10cmの長さです。葉身は単羽状複葉で線状披針形、薄手の草質で15-30cmの長さ、2-3cmの幅で、深緑色をしています。乾燥標本では黒みを帯びます。
葉の先端: 最も特徴的なのは、葉の先端が蔓状に長く伸び、そこに新たな芽を生じる点です。この芽が地面に触れると根を下ろし、新しい株として成長します。この繁殖方法により、フジシダはしばしばまとまった群落を形成します。
羽片: 羽片は50対ほどあり、広披針形から長楕円形で幅4-6mmです。先端は鋭く尖るか鈍く尖り、柄はありません。基部の先端側は大きい角度を持ち、耳状の突出部があり、基部側は狭まります。羽片の縁には深く、先端が丸まった鋸歯があります。
胞子嚢群: 小さくて円形の胞子嚢群が、鋸歯の突起ごとに形成されます。縁が反転して胞子嚢群を覆うことがありますが、包膜はありません。

分布と生育環境

フジシダは、本州では福島県と関東地方以南、四国、九州の中北部に分布し、国外では中国と台湾から知られています。山林の森林内に生育し、地上や岩の上に見られます。温帯南部から暖帯の気候帯に位置し、特に陰樹林の下の岩石地に生育することが多いですが、比較的稀です。

和名の由来

和名の「フジシダ」は、富士山に生えるシダという意味ではなく、愛知県犬山市にある尾張富士に由来するとされています。

分類

フジシダは通常、オオフジシダ属に分類されますが、この属の他の種が2回羽状複葉であるのに対し、フジシダは1回羽状複葉である点で区別できます。また、葉先が蔓状に伸びて先端に芽を生じる特徴も珍しく、フジシダ属（Ptilopteris）としてP. maximovicziiとする説もあります。この場合、フジシダ属は本種のみを含む単形属となります。

参考文献

岩槻邦男編、『日本の野生植物　シダ』、(1992)、平凡社
田川基二、『原色日本羊歯植物図鑑』、(1959)、保育社
* 池畑怜伸、『写真でわかるシダ図鑑』、(2006)、トンボ出版

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