フラッシュポイント (エルスワールド)

フラッシュポイント：歴史改変とヒーローの宿命

『フラッシュポイント』(Flashpoint)は、DCコミックスのエルスワールド・インプリントより1999年から2000年にかけて刊行された、全5号からなるリミテッド・シリーズです。脚本はパット・マクグリール、作画はノーム・ブレイフォーグルが担当しました。この作品では、超高速移動能力を持つヒーロー、ザ・フラッシュことバリー・アレンが、過去への介入によって引き起こされる歴史の歪みと、自らの運命の狭間で苦悩する姿が描かれています。

物語は、バリーが過去へタイムトラベルし、ベトナム戦争やピッグス湾事件、そしてケネディ大統領暗殺を阻止するところから始まります。歴史を大きく変えたバリーでしたが、ケネディ大統領暗殺阻止の際に被弾し、下半身不随という大きな代償を払うことになります。

スーパーヒーローとしての活動を断念したバリーは、その知見を活かし、科学技術の発展に貢献。火星植民地化計画の責任者として、プロジェクトを成功に導きます。しかし、火星調査中に発見された謎の人工物が、バリーの甥であるウォーリー・ウェストを昏睡状態に陥れます。

治療のため、バリーは科学者ヴァンダル・サベッジを訪ねますが、サベッジはウォーリーのクローン作成を試みます。クローンは脱走し、バリーは彼を保護することに。クローンからエネルギーを抽出しつつ、バリー自身もテレポート装置を通じて身体能力を取り戻していきます。

再びフラッシュとして覚醒したバリーは、サベッジを追跡しますが、サベッジの攻撃を受け、消滅してしまいます。その後、ケネディ大統領の命令でサベッジも暗殺されます。バリーの死は世界に衝撃を与えますが、物語の最後で、彼は別の世界で生き延びていることが示唆されます。

この作品は、歴史改変というテーマを深く掘り下げ、過去を変えることによる因果応報、そしてヒーローの犠牲と葛藤を鮮やかに描いています。バリーの苦悩と決断、サベッジの野望、そして火星植民地化計画といった壮大なスケールは、読者に強い印象を与えます。

単なるスーパーヒーロー物語にとどまらず、歴史、科学、そして人間の倫理といった多様な要素が複雑に絡み合い、読み応えのある作品となっています。バリーの行動が引き起こす波紋、そして彼を取り巻く人々の運命は、読者に多くの問いかけを投げかけます。

『フラッシュポイント』は、歴史改変の物語を通して、選択と責任、そして運命の残酷さといった普遍的なテーマを問いかける、傑出した作品と言えるでしょう。ヒーローの活躍だけでなく、その代償や葛藤、そして歴史の複雑さを描いた緻密なストーリー展開は、読者に深い感動と余韻を残します。

この作品は、単なるエンターテイメントとしてだけでなく、歴史や倫理といったテーマについて考えるきっかけを与えてくれる、奥深い物語です。スーパーヒーロー好きはもちろん、歴史やSFに興味のある方にも強くおすすめできる作品と言えるでしょう。

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