フラットアイアンビルディング

フラットアイアンビルディング

アメリカ合衆国ニューヨーク市、マンハッタン区の活気あふれる中心部に、そのユニークな姿で佇む高層ビル、それがフラットアイアンビルディングです。正式名称はフラービルディングとも呼ばれます。ニューヨークの象徴的な建築物の一つとして、世界中にその名を知られています。

概要と歴史

フラットアイアンビルディングは、1902年に竣工しました。地上22階建て、高さは87メートルを測り、完成当時はニューヨークに数多く建設され始めていた高層建築物の中でも、ひときわ目を引く存在でした。当時のニューヨークにおいて、最も高さを誇る建物の一つに数えられていたのです。ただし、「完成当時に世界一高かった」あるいは「ニューヨークで一番高かった」という記述を見かけることがありますが、これは正確ではありません。実際には、フラットアイアンビルディングより前に竣工したパークロウビルディング（1899年完成、119.2メートル）の方が高く、フラットアイアンビルディングが世界一あるいはニューヨーク一の高さになったことは一度もありません。

1世紀以上にわたる歴史を刻むこのビルは、現存するニューヨークのビルの中でも特に古い部類に入ります。その独特な形状や、竣工当時の建築様式を今に伝える存在として、しばしばニューヨークにおける初期の摩天楼（スカイスクレーパー）の一つとして語られます。

特徴的な形状と名称の由来

フラットアイアンビルディング最大の特徴は、その類を見ない三角形のフォルムです。敷地の形状に合わせて設計されたこの建物は、鋭角になった先端部分がわずか1メートルに満たない幅しかありません。この特異な外観は、かつて家庭で使われていた鋳鉄製の衣類用アイロンに酷似していることから、「フラットアイアン（平らな鉄）」という愛称で親しまれるようになりました。設計を手がけたのは、高名な建築家ダニエル・バーナムです。彼の設計により、この革新的な形状のビルは実現しました。

所在地

このビルは、ニューヨーク市マンハッタン区の、5番街とブロードウェイ、そして22丁目が交わる独特な三角形状の敷地に建てられています。さらに、この三角形の北端を23丁目がかすめる形で位置しています。住所は5番街175号です。周辺には、広々としたマジソンスクエアパークが南側に隣接し、歴史的な地区であるレディース・マイル・ヒストリック・ディストリクトの北端にもあたります。この複雑な交差点に建つことで、ビルの三角形の形状がより際立っています。

ニューヨークの象徴として

フラットアイアンビルディングは、その唯一無二の姿から、瞬く間にニューヨークのシンボルの一つとなりました。多くの写真家や芸術家によって描かれ、映画やテレビ番組にも度々登場するなど、ニューヨークの街を象徴する存在として世界中の人々に認識されています。このビルを中心に、周辺の一帯は「フラットアイアン地区」と呼ばれるようになり、地区名そのものがビルの名前に由来するという、ランドマークとしての強い影響力を持っています。

歴史的な価値も高く評価されており、1966年にはニューヨーク市指定歴史建造物に指定されました。さらに、1979年にはアメリカ合衆国国家歴史登録財に登録され、1989年にはアメリカ合衆国国定歴史建造物にも指定されるなど、アメリカ合衆国全体の歴史的遺産としても非常に重要な建物であることが公的に認められています。そのユニークな形状と豊かな歴史を持つフラットアイアンビルディングは、今もなお、ニューヨークの街並みにおいて特別な輝きを放ち続けています。

もう一度検索