フランス国立オーヴェルニュ＝ローヌ＝アルプ管弦楽団

フランス国立オーヴェルニュ＝ローヌ＝アルプ管弦楽団（仏: Orchestre national Auvergne-Rhône-Alpes）は、フランス中部、オーヴェルニュ地方のクレルモン＝フェランを拠点とする室内オーケストラです。弦楽器奏者21名のみで構成される、高度なアンサンブルを特徴としています。現在は、首席指揮者をトーマス・ツェートマイヤーが務め、エンリコ・オノフリとクリスティアン・ツァハリアスが副指揮者として名を連ねています。

楽団の歩み

楽団は1981年、「オーヴェルニュ室内管弦楽団」としてその歴史をスタートさせました。創立から1993年まで、ヴァイオリニストとしても名高いジャン＝ジャック・カントロフが音楽監督として楽団を率いました。その後、アリ・ヴァン・ベーク（1994年 - 2011年）、ロベルト・フォレス＝ヴェセス（2012年 - 2021年）へと音楽監督は引き継がれ、2021年からは現在の指揮者体制となっています。

重要な転換点となったのは2019年で、この年にフランス政府から国立管弦楽団の認定を受け、「フランス国立オーヴェルニュ管弦楽団」と名称を変更しました。さらに2023年には、現在の名称である「フランス国立オーヴェルニュ＝ローヌ＝アルプ管弦楽団」へと改称し、活動地域名が加えられました。

特徴と高い評価

当楽団は、その名の通り弦楽器奏者21名という編成に特化しており、バロック時代から現代音楽に至るまで、幅広い時代の作品をレパートリーとしています。この少数精鋭の編成ならではの緊密で洗練されたアンサンブルは、ヨーロッパ屈指の室内オーケストラとして高い評価を得ています。

特に注目すべきは、才能あるヴァイオリニストを育成する「コンサートマスターの養成所」としての側面です。ゴルダン・ニコリッチ（ロンドン交響楽団）、スヴェトリン・ルセヴ（フランス放送フィルハーモニー管弦楽団、スイス・ロマンド管弦楽団）、アモリー・コエイトー（フランス放送フィルハーモニー管弦楽団）など、後にヨーロッパの名門オーケストラでコンサートマスターを務めた多くの奏者が、キャリアの初期にこの楽団で経験を積んでいます。現在、ソロ・コンサートマスターはギヨーム・シレムが務めています。また、指揮者を置かずに奏者同士の意思疎通だけで演奏する公演が多いのも、当楽団のアンサンブル能力の高さを物語っています。

録音活動とオンライン展開

これまでに50タイトルを超える録音をリリースしており、ジャン＝ジャック・カントロフが弾き振りしたパガニーニのヴァイオリン協奏曲や、チャイコフスキーの『弦楽セレナード』、『フィレンツェの思い出』などが特に知られています。また、フランスのオーケストラとしては初めて、自主制作によるオンライン・レーベルを設立し、定期演奏会のライブ録音などをデジタル配信するなど、メディア展開にも積極的です。

世界を舞台にした演奏活動

楽団は、プラドのカザルス音楽祭、ラ・ロック＝ダンテロン音楽祭、オヴェール・シュル＝ロワーズ音楽祭といったフランス国内の著名な音楽祭に招聘されるほか、ニューヨーク、フィラデルフィア、ボルティモア（アメリカ）、ミュンヘン（ドイツ）、ジュネーヴ（スイス）、ミラノ（イタリア）など、世界の主要都市でツアーを行っています。日本への来日も頻繁で、大規模な国際音楽祭である「ラ・フォル・ジュルネ」には度々出演し、日本の聴衆にもその素晴らしい演奏を届けています。

日本とのつながり

当楽団は、日本人団員が多いことでも知られています。特に2023年には、ヴァイオリニストの小島燎氏がコンサートマスターに就任したことは、日本でも大きな話題となりました。現在、4名の日本人メンバーが在籍しており、楽団の国際的な色彩を豊かにしています。

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