フランス国立農村工学・河川・森林学校

フランス国立農村工学・河川・森林学校

フランス国立農村工学・河川・森林学校（École nationale du génie rural, des eaux et des forêts）、略称ENGREFは、環境工学や林学といった専門分野に特化したフランスの高等教育機関、いわゆるグランゼコールの一つです。現在、アグロパリテックの構成校として位置づけられています。

歴史的変遷

ENGREFの起源は、フランスに数多く存在する高等教育機関の中でも古いものの一つに遡ります。その始まりは1824年、ロレーヌ地方の中心都市ナンシーに設立されたナンシー水利・林業学校にあります。この機関は、森林学の研究を深めるとともに、将来の林野行政を担う高等行政官を養成することを目的として設立されました。

その後、フランス国内の政治体制が幾度か変化する中で、学校の名称も改められました。フランス共和国体制が確立されるにつれて、フランス国立河川・森林学校（ENEF；École Nationale des Eaux et Forêts）という名称が定着していきます。一方、パリには1919年にフランス国立農村工学学校（École Nationale du Génie Rural）が設立され、農村開発分野の専門家育成を担うようになります。

そして、1960年代に実施されたピザニ改革として知られる高等教育機関の再編を経て、ENEFは農村工学部門と統合されることになります。この合併により、現在の名称であるフランス国立農村工学・河川・森林学校、ENGREFが誕生し、現代に至るまでその役割を果たしています。

教育内容と役割

今日、ENGREFはフランス国内において、農林業に携わる人材や、森林官をはじめとする農林行政を担当する専門家を育成するための中心的な教育機関としての役割を担っています。本校に入学するためには、まず大学で2年間の課程を修了した後に、厳しい選抜試験を突破する必要があります。入学を許可された学生は、その後さらに5年間にわたる集中的かつ高度な教育カリキュラムを履修します。

この合計7年間に及ぶ高等教育課程を修了し卒業した者は、主に森林行政など、国や公共セクターにおける重要な職務に就くことが多いとされています。このことからも分かるように、ENGREFは入学前の選抜段階から入学後の専門教育に至るまで、非常にハイレベルな学習が求められる環境であり、農林分野における真のエキスパートを養成するための、フランスにおけるエリート教育機関としての地位を確立しています。

国際交流の歴史

ENGREFは、その長い歴史の中で、海外からの留学生を積極的に受け入れてきた実績を持っています。ENEFとして知られていた時代には、例えば1867年から1884年にかけて英国人留学生を受け入れていた記録があります。また、アメリカ合衆国において後に初代森林局長を務めることになるギフォード・ピンショー（Gifford Pinchot）も、1889年にはENEFに留学し滞在していました。

さらに、日本からの留学生も受け入れており、明治時代の林学者である高島北海（本名：高島得三）が1885年から1888年にかけて、この学校で専門教育を受けたという歴史も持ち合わせています。こうした事例からも、ENGREFが設立当初から国際的な視野を持ち、世界各国との学術交流や人材育成に貢献してきたことがうかがえます。

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