フランス風景式庭園

フランス風景式庭園：自然とロマンの融合

18世紀後半から19世紀初頭、フランスの[庭園]]界隈では大きな変革が起きました。それまで主流だった幾何学的なフランス式庭園から、より自然でロマンチックな風景式庭園へと移行していったのです。このフランス風景式庭園]は、イギリスで生まれたイギリス風景式[[庭園のフランス版と言えるでしょう。

しかし、単純にイギリス様式を模倣したわけではありません。フランス独自の解釈が加えられ、絵画や哲学、さらには中国庭園の要素も取り入れられた独自の庭園様式が形成されました。

イギリスからの影響とフランス式への体系化

ナポレオン1世の時代、多くのフランス人がイギリスへ亡命し、帰国後、イギリス風景式庭園の様式を持ち帰りました。特にガブリエル・トゥアンは、イギリス庭園の要素を合理的に体系化し、フランスで普及させる上で重要な役割を果たしました。

1860年代には、イギリスのカーペット・ベッディングを模倣した島状の植栽が流行し、現在でもその名残を見ることができる公園があります。フランス独自の解釈として、カーペット・ベッディングとフラワー・ベッディングを融合させた「モザイクチュール」という様式も生まれました。幾何学的なデザインの中に、象徴的なモチーフや動物をかたどったものなど、多様な表現が見られました。ポーランドのピュックラー侯の東洋風風景庭園にも、このモザイクチュールが見られます。

公共空間としての公園と近代墓地

19世紀に入ると、公園は特権階級のためのものではなく、すべての人々のための公共空間という新しい概念が台頭しました。フランスでは、革命政府が没収した貴族の庭園を公共散策路に変えるなど、その動きは活発でした。

ウィーンやドイツでも同様の動きがあり、ナショナリズムと自然を結びつけた「ヴォルクスガルテン」という概念も登場しています。

また、1786年に教会敷地内への埋葬が禁止されたことをきっかけに、近代墓地が誕生しました。ペル・ラシェーズ墓地はその代表例です。墓地は、死者を弔う場所であると同時に、生きている者のための庭園でもありました。曲がりくねった小道や池、湖水などを配した風景は、風景式庭園の様式を踏襲したものでした。

ルソーの哲学：自然回帰への思想

フランス風景式庭園の隆盛には、哲学者ジャン＝ジャック・ルソーの思想が大きな影響を与えました。ルソーは、自然への回帰を説き、人間社会の堕落を批判しました。彼の著作『新エロイーズ』に描かれた理想の風景は、フランス風景式庭園のモデルとなりました。

ルソーはエルムノンヴィルという庭園を愛し、晩年をそこで過ごしました。この庭園は、ルソーの自然観を反映した、初期ロマン主義の代表的な作品と言えるでしょう。

ルソーの思想を体現した庭園として特に有名なのは、ルネ・ド・ジラルダン侯爵がエルムノンヴィルに造営した庭園です。ジラルダン侯爵はルソーの著作を深く理解しており、小説『新エロイーズ』に描かれた理念に基づいて庭園を設計しました。庭園は池を中心とした瞑想的な空間と、森に囲まれた牧歌的な空間で構成され、イギリスの庭園様式の影響も見られます。ルソーの墓は庭園の重要なポイントとして位置づけられています。

著名なフランス風景式庭園

フランスには、数多くの風景式庭園が残されています。

ムーラン・ジョリ: フランスで最初の風景式庭園と言われています。
メレヴィルの庭園: 画家ユベール・ロベールが絵画的な視点を取り入れた庭園。
エルムノンヴィル: ルソーの思想が色濃く反映された庭園。
レの荒野: 神秘的で劇的な雰囲気を持つ庭園。
マルメゾン城: ジョゼフィーヌ皇后が造営した庭園。
ポンピニャン城: 18世紀に造られた庭園
モンソー公園: パリにある有名な庭園。
Désert de Retz: イヴリーヌ県にある庭園。
* Jardin de la reine: マリー・アントワネットが造営した庭園。

他にも、プティ・トリアノン、ランブイエ、パルク・モンソーなど、いくつかの庭園に風景式庭園の名残が見られます。

ラスティック・ビレッジ：田園風景の模倣

風景式庭園と並行して、18世紀のフランスでは、装飾的な農場や「ビレッジ」が造られました。これらの「ラスティック・ビレッジ」は、理想化された田園風景を表現したものでした。シャンティイ城のラスティック・ビレッジや、マリー・アントワネットのHameau de la Reineなどがその例です。

まとめ

フランス風景式庭園は、イギリス風景式庭園の影響を受けながらも、フランス独自の解釈と創造性によって発展した庭園様式です。ルソーの哲学、絵画、中国庭園などの要素を取り入れ、自然とロマンを融合させた独特の世界観を表現しています。現在も残る多くの庭園は、フランスの歴史と文化を伝える貴重な遺産となっています。

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