フランチェスコ・タレンティ

フランチェスコ・タレンティ（Francesco Talenti, 1300年頃？〜1370年頃？）は、中世イタリア、フィレンツェで活躍した建築家であり、彫刻家としても知られています。しかし、彼の生涯には不明な点が多く、彫刻家としての具体的な作品は現在まで確認されていません。彼の名が歴史に刻まれているのは、むしろサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂（フィレンツェ大聖堂）の建設における重要な役割によるものです。

タレンティは、1360年頃に大聖堂の工匠頭の一人として、アルノルフォ・ディ・カンビオが当初計画した大聖堂の平面を、現在のものへと拡張する重要な変更を加えました。この拡張によって、大聖堂はより壮大な規模へと変貌を遂げることになりました。

特に注目されるのは、タレンティが直径42.2メートルにも及ぶ巨大な八角形の空間に、どのようにしてドームを架けようとしたのか、その具体的な方法が不明な点です。後の時代の建築家フィリッポ・ブルネレスキは、タレンティが地上から構築された仮枠を用いてドームを建設しようとしていたのではないかと推測しましたが、確証はありません。タレンティの計画は、15世紀初頭には実現不可能と危惧されるほど、当時の建築技術を超えた挑戦的なものでした。

サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂は、タレンティの拡張計画と、その後のブルネレスキによるドーム建設によって、フィレンツェを代表する建築物として完成しました。タレンティの革新的な発想がなければ、今日の大聖堂は存在しなかったかもしれません。彼の業績は、中世建築の歴史において重要な位置を占めています。

タレンティの人生は謎に包まれている部分が多いものの、彼の建築家としての才能と、大聖堂の建設に込めた情熱は、現代にまで語り継がれています。彼の存在は、ルネサンスの幕開けを告げるフィレンツェの歴史を語る上で、欠かせない重要な要素となっています。

参考文献

ピーター・マレー著、桐敷真次郎訳『図説世界建築史　ルネサンス建築』（本の友社）
ニコラス・ペヴスナー他著、鈴木博之監訳『世界建築辞典』（鹿島出版会）

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