フランチェスコ・バルトロッツィ

フランチェスコ・バルトロッツィは、18世紀から19世紀にかけて活躍した、イタリアに生まれ、主にイギリスで名声を得た優れた版画家です。1727年にフィレンツェで生を受け、1815年にリスボンでその生涯を閉じました。彼の作品は、古典的な絵画や同時代の作品を精緻な版画として再現することで知られています。

金細工師の息子としてフィレンツェに生まれたバルトロッツィは、幼い頃から絵画に対する非凡な才能を示しました。10代の初めには、フィレンツェの美術学校でジョヴァンニ・ドメニコ・フェレッティやイグナツィオ・ハグフォードといった師のもとで基礎を学びました。フィレンツェでの3年間の学びの後、彼はヴェネツィアへと移り、版画の技術習得に専念します。1748年から1754年にかけての期間、ヴェネツィアで版画出版工房を営んでいたドイツ出身の版画家、ヨーゼフ・ヴァグナーのもとで働き、実践的な技術と知識を深めました。ヴァグナーのもとを離れた後、彼は自身の工房を設立し、当時の有名な風景画家であるマルコ・リッチやフランチェスコ・ツッカレリの作品を版画化し、出版することで次第にその名を知られるようになります。さらに、1756年から1760年にかけてはローマに滞在し、ドメニキーノの壁画など、ルネサンスやバロック期の巨匠たちの作品を積極的に版画として制作・発表しました。

イタリア各地での活動を通じて、バルトロッツィが制作した巨匠たちの作品に基づく版画は、イタリア国内だけでなく国外でも高い評価を受けるようになります。その精密な技術と表現力は、多くの美術愛好家や収集家の注目を集めました。1763年、イギリス国王ジョージ3世の美術コレクションのために作品購入の旅でイタリアを訪れていた、画商であり自身も版画家であったリチャード・ダルトンは、バルトロッツィの才能に感銘を受けます。ダルトンは彼にイギリスへの移住と、イギリス王室の版画家という地位を提供することを勧めました。

ダルトンの提案を受け入れたバルトロッツィは、1764年にロンドンへと渡ります。イギリスに活動の拠点を移した後、彼はすぐにその才能を発揮し、美術界で重要な存在となります。1768年に設立されたロイヤル・アカデミー・オブ・アーツでは、その創立会員の一人として名を連ねました。これは、彼が当時のイギリス美術界でいかに高く評価されていたかを示すものです。ロンドンでの約40年間にわたり、彼は王室の仕事を請け負う傍ら、様々な主題の版画を制作し、多くの弟子を育成しました。

イギリスでの長きにわたる活動を経て、バルトロッツィは晩年に新たな地へと赴きます。1802年には版画家協会（Society of Engravers）を設立し、初代会長に就任しましたが、同年、ポルトガルの貴族であるロドリゴ・デ・ソウザ・コウティーニョに招かれ、リスボンへ移住することを決意します。リスボンでも彼は版画家としての活動を続け、その地で1815年に88歳で亡くなりました。

バルトロッツィは、当時のフランスで開発された新しい中間調を実現する版画技術を巧みに使用したことでも知られています。これにより、豊かな諧調を持つ繊細な表現が可能となり、彼の版画作品の質を高めました。また、息子のガエターノ・バルトロッツィも父の後を追って版画家、そして画商となり、著名なピアニスト、テレーゼ・ジャンセンと結婚するなど、彼の芸術的な影響は次世代にも及んでいます。フランチェスコ・バルトロッツィは、イタリアで培った確かな技術と、イギリス、ポルトガルでの国際的な活動を通じて、18世紀後半から19世紀初頭にかけてのヨーロッパ版画史において重要な足跡を残しました。

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