フランツ・ヨーゼフ・マクシミリアン・フォン・ロプコヴィッツ

ヨーゼフ・フランツ・マクシミリアン・フォン・ロプコヴィッツは、1772年12月7日に生まれ、1816年12月15日にその生涯を終えた、オーストリア帝国に仕えたボヘミア系の侯爵です。軍人として陸軍少将の階級を持ち、ザーガン公爵、ラウドニッツ公爵としても知られています。しかし、彼の最も特筆すべき功績は、何よりも芸術、特に音楽に対する情熱と、その熱心な後援活動にあります。

ロプコヴィッツ侯爵は、フェルディナント・フォン・ロプコヴィッツ侯爵と、カリニャーノ公ルイージ・ヴィットーリオの娘ガブリエッラの間に一人息子として生まれました。母方の叔母にはランバル公爵夫人がいます。1792年8月2日、シュヴァルツェンベルク侯ヨーゼフ1世の娘カロリーネと結婚し、夫婦は12人の子供に恵まれました。経済的な背景としては、1786年にザーガン公領をクールラント公ペーター・フォン・ビロンに売却したものの、1789年には皇帝より所領に基づくラウドニッツ公爵位を授与されています。また、1803年には由緒ある金羊毛騎士団の騎士に叙せられました。

軍務を遂行する傍ら、ロプコヴィッツ侯爵は美術、文学、音楽といった様々な芸術分野に深い関心を持ち、その活動を精力的に支援しました。彼自身も優れたヴァイオリン奏者としての音楽的才能を持っていました。侯爵は、経済的に困難を抱える作曲家たちに手を差し伸べ、彼らの作品が広く社会に受け入れられるよう、その普及に尽力しました。特に有名なのは、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンとルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンへの支援です。

ロプコヴィッツはハイドンに楽曲制作を依頼し、ベートーヴェンには活動資金を提供しただけでなく、彼の作品が公の演奏会で紹介されるよう計らいました。彼の邸宅であるラウドニッツ城、アイゼンベルク城、そしてウィーンのロプコヴィッツ宮殿にはそれぞれ専属のオーケストラが置かれており、時には侯爵自身もヴァイオリン奏者としてこれらのオーケストラと共に演奏に参加することもあったと言われています。彼はまた、ウィーン音楽愛好協会、ボヘミア音楽文化振興協会、ウィーン演劇事業協会といった重要な芸術関連団体の会員として活動し、貴族階級だけでなく、一般市民層にも芸術への関心を広める運動を支援しました。

ロプコヴィッツ侯爵の芸術に対する貢献の中で、特に歴史的に重要な出来事の一つに、ベートーヴェンの交響曲第3番「エロイカ」の初演が挙げられます。この革新的な作品は、1804年にラウドニッツ城に抱えられていたオーケストラによって初めて演奏されました。彼の惜しみない芸術振興への投資は多額に及び、晩年にはその結果として財政的な困難に直面したほどです。

ロプコヴィッツ侯爵の芸術支援は、多くの作曲家によって感謝され、彼らの作品が侯爵に献呈されました。著名な例としては、ハイドンの弦楽四重奏曲作品77（第81番および第82番）、「ロプコヴィッツ四重奏曲」として知られるものが挙げられます。ベートーヴェンからは、初期の傑作である弦楽四重奏曲作品18の全6曲をはじめ、交響曲第3番「エロイカ」、三重協奏曲、そして後に音楽史上の金字塔となる交響曲第5番「運命」、交響曲第6番「田園」、さらには弦楽四重奏曲第10番や連作歌曲集「遥かなる恋人に」（作品98）など、数多くの重要な作品が献呈されています。

このように、ヨーゼフ・フランツ・マクシミリアン・フォン・ロプコヴィッツは、単なる貴族や軍人としてだけでなく、才能ある芸術家たちの理解者であり、彼らの創造活動を支え、その作品を世に送り出す上で極めて重要な役割を果たした人物として、後世にその名を刻んでいます。彼のパトロネージュは、ウィーン古典派から初期ロマン派にかけての音楽が隆盛を極めた時代の重要な一側面を示しており、その影響は計り知れません。

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