フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト

フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト：猪突猛進の勇将

フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルトは、田中芳樹氏のSF小説『銀河英雄伝説』に登場する、銀河帝国軍の主要提督の一人です。彼は「ビッテンフェルト」の名で広く知られ、その勇猛果敢な戦いぶりで多くのファンを魅了しました。

「黒色槍騎兵艦隊」を率いる猛将

ビッテンフェルトは、黒一色に塗装された艦隊「黒色槍騎兵艦隊（シュワルツ・ランツェンレイター）」を率いる提督として登場します。彼の旗艦は「王虎（ケーニヒス・ティーゲル）」です。ローエングラム陣営の主要提督の一人であり、後に「獅子の泉の七元帥」の一人に数えられます。

主要提督の中では最も気性が激しい人物として描かれていますが、「粗にして野だが卑にあらず」という言葉が当てはまる、憎めない人物です。その荒々しい用兵や戦術は、一見すると無謀に見えますが、戦理に基づいたものであり、決して無鉄砲なだけではありません。

ラインハルトが元帥府を開いた当初から仕え、数々の戦いに参加しました。功績も多い一方で失敗も多く、特にアムリッツァ会戦ではヤン・ウェンリーの第13艦隊に手痛い反撃を受けました。しかし、ランテマリオ会戦やマル・アデッタ星域会戦など、重要な戦いで勝利に貢献しています。また、ラインハルトに大親征を決意させたのも、ビッテンフェルトの進言でした。

回廊の戦いでは、ヤンの策略にはまり大敗を喫しましたが、帝国軍本隊と合流して本戦に参加。第2次ランテマリオ会戦では、ロイエンタールの攻勢が一時的に劣勢となるも、最終的には勝利に貢献しました。

人物像

ビッテンフェルトは、オレンジ色の髪と筋骨隆々の体格が特徴的な人物です。その外見からもわかるように、武人気質にあふれており、ラインハルトの配下の中でも特に武人らしい提督と言えるでしょう。

しかし、その言動は時に思慮が浅く傍若無人に見えることもありますが、一貫性があり、邪気がないため、多くの部下から慕われています。オーベルシュタインを嫌悪しており、公然と非難することも厭いません。この犬猿の仲ぶりは、作中でも度々描かれています。

芸術には全く関心がなく、ルビンスキーの火祭りでは、美術品の搬出に無頓着だったため、メックリンガーに皮肉られています。しかし、戦場では常に先頭に立ち、その勇猛さで味方を鼓舞しました。

能力と評価

ビッテンフェルトは、「帝国軍の呼吸する破壊衝動」と評されるように、常識外れの猛々しさと破壊力を誇ります。相手の策に嵌っても、力押しで打ち破ってしまうことも少なくありません。しかし、守勢に回ると脆く、その失敗が戦局を大きく左右することもありました。

彼は、ウランフ、フィッシャー、メルカッツなど、同盟軍の主要な指揮官を戦死させており、帝国軍提督の中で最も多くの同盟軍提督を死に追いやった人物とされています。その功績と失敗の大きさは、彼の指揮官としての個性を際立たせています。

ラインハルトからは、独断専行によって味方に損害を与えたことを叱責されることもありましたが、その一方で、彼の勇猛さを高く評価していました。

作者の田中芳樹氏は、ビッテンフェルトを「死ぬ予定だったのに作者の魔の手を逃れて最後まで生き残った人物の一人」と評しています。また、「戦いの無い平和の時代では大久保彦左衛門になるだろう」とも述べています。

OVA版では、真面目な性格の人物が多い帝国軍の中で、数少ないコメディリリーフ的な役割を担っています。藤崎竜氏の漫画版では、ウランフが戦死した際に敬礼するなど、武人としての礼節を重んじる一面も描かれています。

フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルトは、『銀河英雄伝説』の世界において、その個性的なキャラクターと、激しい戦いぶりで、忘れられない存在感を放っています。

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