フリードリヒ・ブルーメ

フリードリヒ・ブルーメは、1893年1月5日にプロイセン王国ヘッセン＝ナッサウ地方（現在のドイツ・ヘッセン州シュリュヒテルン）に生を受け、1975年11月22日に同地で生涯を終えたドイツの著名な音楽学者です。

学問の道へ

ブルーメはミュンヘン大学やベルリン大学で学び、ベルリン大学では高名なヘルマン・クレッチュマルに師事しました。クレッチュマルの勧めもあり、ライプツィヒ大学でも講義を聴講しています。学業を修めた後、1921年にライプツィヒ大学に学位論文を提出し、学術的な資格を取得しました。その後、1923年からはベルリン大学で講師を務め、教授資格（ハビリテーション）を取得しました。そして1934年、キール大学より音楽学の正教授として招聘され、1958年に引退するまでその地位に留まり、多くの研究と教育に携わりました。

第三帝国期の活動

ブルーメのキャリアにおいて、第三帝国期（1933年-1945年）は特に複雑な側面を持ちます。この時代、彼は当時の体制と連携し、学術的な立場から特定の思想を擁護する活動を行いました。具体的には、一連の講義や論文を通じて、「音楽と人種」という当時のイデオロギーに沿った主題を探求しようと試みました。1933年から終戦までの期間、ブルーメはドイツ国立音楽研究所における影響力のある研究者の一人として認められており、1939年には「ドイツの音楽遺産」という研究プロジェクトの監督を任されています。

これらの研究成果は、『音楽における人種問題』と題された著作にまとめられました。また、1938年5月27日には、デュッセルドルフで開催された第1回帝国音楽祭週間において、音楽学会の全国大会の場で「音楽と人種」と題する講演を行いました。同年、体制によって統合・管理されていた音楽学会の機関紙『音楽』に、「音楽と人種――音楽に関する人種研究の基本問題」という論文を発表し、自身の見解を広く示しました。

戦中・戦後の転換と指導的役割

第二次世界大戦中の1942年には、新シュッツ協会の議長に就任しています。彼の初期の研究は、ルター派の宗教音楽やヨハン・ゼバスティアン・バッハの作品に焦点を当てていました。また、研究者・編集者として、ミヒャエル・プレトリウスの作品全集の編集主幹や、オイレンブルク社から出版されたヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトのピアノ協奏曲集の編集者を担当するなど、実用的な楽譜出版にも貢献しています。

戦後、ブルーメはドイツの音楽文化の再建において重要な指導者としての役割を担うようになります。1947年には、新たに設立された音楽学会（Gesellschaft für Musikwissenschaft）の会長に選出されました。会長在任中の1949年からは、音楽学における最も重要な参照文献の一つである『MGG音楽百科事典』（Die Musik in Geschichte und Gegenwart）の計画立案から編集主幹に至るまで、中心的な役割を果たしました。この記念碑的なプロジェクトは、国内外の多くの音楽学者の協力を得て、長期にわたり継続されました。

研究思想と評価

研究者としてのブルーメは、アントン・ブルックナーの交響曲を、ソナタ形式の歴史的な発展の中で肯定的に位置づけた先駆者の一人としても評価されています。一方で、1962年のバッハ祭における講演で、晩年のカンタータ制作が少ないことを根拠に、教会音楽家としてのバッハの側面を否定するような主張を展開したことは、議論を呼びました。この主張に対しては、バッハの音楽が彼の敬虔な信仰心に基づき、神の栄光を表し、福音を伝えるというプロテスタントの音楽観から生まれたものであるという反論がなされています。

フリードリヒ・ブルーメは、その学術的な業績、特に『MGG音楽百科事典』の編集における貢献により、戦後ドイツ音楽学界の発展に大きく寄与しましたが、第三帝国期における活動は今日でも評価の対象となっています。彼は生地シュリュヒテルンで、モーツァルト研究家のカスバート・ガードルストーンとほぼ同時期に亡くなりました。

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