フレッシュ・クリーム

クリーム『フレッシュ・クリーム』

クリームがバンドとしての第一歩を踏み出した、記念すべきデビューアルバムが『フレッシュ・クリーム』です。ジャック・ブルース（ベース、ボーカル）、エリック・クラプトン（ギター、ボーカル）、ジンジャー・ベイカー（ドラムス、パーカッション、ボーカル）という、それぞれが確固たる個性を持つ三人の凄腕ミュージシャンが集結して生まれたこの作品は、その後のロックシーンに大きな影響を与えることになります。

イギリスでは、マネージャーであるロバート・スティグウッドが新たに立ち上げた独立レーベル、リアクション・レコードの最初のリリースとして、1966年12月9日に日の目を見ました。この時、アルバムはステレオとモノラルの両方のフォーマットで発売され、同時にバンドの代表曲の一つとなるシングル「アイ・フィール・フリー」もリリースされています。アメリカ合衆国では、少し遅れて1967年1月にアトコ・レコードからリリースされました。こちらもイギリス盤と同様にステレオ版とモノラル版が存在しました。

長年にわたり、CDとして再発される際にはステレオ版のみが流通していましたが、熱心なファンにとっては待望であったイギリス盤のモノラル・バージョンが、2013年後半に日本限定で発売されたデラックスセットの一部として初めて公式にリリースされました。

収録曲にはいくつかのバージョンが存在します。基本となるイギリス盤オリジナルは全10曲で構成されており、リードボーカルの多くをジャック・ブルースが担当しています。アメリカ盤もリリースされましたが、後にRSO/ポリドールから再発売された際には、「アメリカ盤後期」と呼ばれるバージョンが登場しました。これはイギリス盤の曲順に倣いつつ、特に人気の高かったシングル曲「アイ・フィール・フリー」がA面の一曲目に追加されたものです。

中でも特筆すべきは、1966年にスウェーデンでのみリリースされた特殊なバージョンです。このスウェーデン盤は、イギリス盤の10曲に加え、ジャック・ブルースとピート・ブラウンの共作「包装紙」、そしてレイ・スミスとトニー・コルトンの共作「コーヒー・ソング」の2曲が追加され、全12曲という内容でした。この盤とジャケットはドイツで製造され、スウェーデンにのみ輸出されたという経緯を持ちます。ちなみに、ドイツ本国でリリースされたオリジナル盤は、イギリス盤と同じく10曲入りでした。

バンドは「コーヒー・ソング」の収録をあまり望んでいなかったとされますが、結果としてモノラル版が制作され、「包装紙」との両A面シングルとしてリリースされています。また、当時「コーヒー・ソング」のステレオ・バージョンをリリースする計画はありませんでしたが、なぜかスウェーデン盤には、バンドが後に破棄した1966年8月上旬のセッションで制作されたステレオミックスが使用されています。このミックスは、大部分のサウンドが右チャンネルに定位し、ギターソロのみが左チャンネルにオーバーダビングされたという独特なものでした。このミックスはすぐに放棄され、その後新たにステレオミックスが作成されています。

スウェーデン盤のジャケットデザインとレコード番号（623 031）はドイツ盤と同一でしたが、裏面のデザインには3種類のバリエーションが存在しました。正確に12曲全てが記載されたもの、なぜか10曲しか記載されていないもの、そして10曲記載の上に12曲表記の紙が貼られたものの3パターンが確認されています。

このアルバムの制作には、プロデューサーとしてロバート・スティグウッド、エンジニアとしてジョン・ティンパリーが携わっています。

商業的にも成功を収め、イギリスのアルバムチャートでは最高6位、アメリカのアルバムチャートでも最高39位を記録しました。そして、後年の評価も高く、音楽誌『ローリング・ストーン』が2003年に発表した「オールタイム・ベストアルバム500」では、第101位にランクインしています。

『フレッシュ・クリーム』は、クリームという伝説的なバンドの誕生を告げると同時に、ブリティッシュ・ブルースロックの新たな地平を切り開いた記念碑的な作品と言えるでしょう。

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