フレッド・フェルプス

フレッド・フェルプス（Fred Phelps）は、1929年11月13日に生まれ、2014年3月19日に84歳で亡くなったアメリカ合衆国の宗教家です。彼は、ウエストボロ・バプティスト教会の牧師として、その過激な行動と発言で広く知られています。

ミシシッピ州出身のフェルプスは、17歳で南部バプテスト連盟の牧師に叙階され、ボブ・ジョーンズ・カレッジを卒業後、説教師としてのキャリアをスタートさせました。その後、彼は法曹界に進み、弁護士資格を取得してカンザス州で事務所を開業しました。公民権関連の裁判を多く手がけましたが、法廷記者を侮辱したことが原因で弁護士資格を剥奪されてしまいます。この出来事が、彼がウエストボロ・バプティスト教会を創設するきっかけとなりました。

ウエストボロ・バプティスト教会は、その特異な教義と活動で知られています。フェルプスとその信者たちは、「神は同性愛を憎んでいる」という教義を掲げ、同性愛者に対する激しい侮辱や嫌がらせを繰り返しました。彼らの行動の中でも特に批判を浴びたのが、葬儀ピケです。彼らは、同性愛者が関係しているとみなした葬儀や、アメリカ軍の戦死者の葬儀にまで押しかけ、故人を冒涜するプラカードを掲げて抗議活動を行いました。このような行為は、アメリカ社会の左右両派から強い反発を招きました。

フェルプスは、アメリカ合衆国そのものやアメリカ軍をも攻撃の対象としました。彼は、アメリカの道徳的退廃を非難し、自然災害やテロを「神の裁き」だと主張しました。さらに、大規模な事故やテロの犠牲者の葬儀でもピケを行い、多くの人々を傷つけました。彼の過激な行動は、社会的な非難を浴びるだけでなく、法的な問題も引き起こしました。

フェルプスの活動は、スナイダー対フェルプス事件（Snyder v. Phelps）という重要な裁判にも発展しました。これは、戦死した海兵隊員の葬儀でウエストボロ・バプティスト教会が抗議活動を行ったことに対して、遺族が精神的苦痛を訴えた裁判です。最高裁判所は、教会の表現の自由を認める判断を下しましたが、この事件はアメリカ社会における表現の自由と人権、そして感情的な痛みを伴う問題について深く考えさせられる機会となりました。

フェルプスの死後も、ウエストボロ・バプティスト教会の活動は続いています。その過激な行動は多くの人々に不快感を与え、憎悪を煽るものとして非難され続けていますが、一方で、彼らの活動は表現の自由に関する重要な議論を喚起するものでもあります。

フレッド・フェルプスの生涯は、宗教的な過激主義が社会に与える影響を考える上で、重要な教訓を与えてくれます。彼の行動は、多くの人々を傷つけ、憎悪を煽った一方で、表現の自由や多様性に関する議論を深めるきっかけとなったことも事実です。

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