フレデリカ・グリーンヒル

フレデリカ・グリーンヒルは、田中芳樹のSF小説『銀河英雄伝説』に登場する、自由惑星同盟側の重要な人物です。物語の中盤でヤン・ウェンリーと結婚し、フレデリカ・グリーンヒル・ヤンとなりますが、作中では主に「フレデリカ」と呼ばれています。

概要

同盟軍の重鎮、ドワイト・グリーンヒル大将の娘であり、主人公ヤン・ウェンリーの副官を務めます。士官学校を次席で卒業した才色兼備の女性士官で、22歳という若さながら、ヤンをはじめとする艦隊首脳部からの信頼も厚いです。実は彼女は、14歳の時にエル・ファシルの脱出行でヤンに救助された避難民の一人であり、その時からヤンに憧れを抱いていました。物語中盤でヤンと結婚し、同盟滅亡後は副官として、また妻として彼を支え続けます。ヤンの死後は、民主共和制における文民側のリーダーとしてイゼルローン共和政府の代表となり、ユリアン・ミンツと共に民主主義を守るために尽力します。

フレデリカの本編での初登場は、第13艦隊の新設時に司令官となったヤンの副官に任命された時です（第1巻）。時系列上では、エル・ファシルの脱出行が最初の登場となります。同盟側の主要人物として、第1巻から物語の様々な重要なエピソードに関わります。

銀河英雄伝説の元となった未完の作品「銀河のチェス・ゲーム」にも、ヤン・ウェンリーと共に登場していました。銀河英雄伝説で、ヤンの人格が旧作の静かで忍耐強い高潔な人物から、年金を気にする問題児へと変更されたため、女性読者のために美人の副官としてフレデリカが加えられたという逸話があります。

略歴

宇宙暦774年2月19日 - 誕生
14歳 - エル・ファシルの脱出行に遭遇。指揮官であった21歳のヤンに一目惚れする。サンドイッチとコーヒーを差し入れするも、ヤンからは紅茶が良かったと不満を言われる。頼りないヤンに不信感を抱く大人たちを庇う。
794年 - 士官学校を次席で卒業。統合作戦本部情報分析課に勤務。
796年 - 中尉の時に、キャゼルヌの手配で新設された第13艦隊の司令官ヤン・ウェンリーの副官に就任。（OVA版ではアスターテ会戦でヤンの力量を再評価したドワイト・グリーンヒル大将の推薦による）。
797年4月 - 救国軍事会議によるクーデターが発生。父親が議長であったため微妙な立場となるが、ヤンが意に介さなかったため、引き続き副官を務める。クーデター終結後、父親が自殺（実際にはアーサー・リンチに射殺）するも、2時間の猶予の後、軍務に復帰。
799年 - ラグナロック作戦でヤンがイゼルローン要塞を放棄しハイネセンに帰還した時に少佐に昇進。バーミリオン星域会戦の直前の休暇でヤンにプロポーズされ、これを受諾。バーラトの和約後の6月10日、25歳でヤンと結婚し、「フレデリカ・グリーンヒル・ヤン」となる。ヤンとは7歳差。
和約後 - ヤンが帝国と同盟双方からマークされる中、7月22日にヤンが逮捕されると、フレデリカはついに反乱を起こしてヤンを救出。
宇宙暦800年 - 回廊の戦い後、ラインハルトとの停戦交渉にヤンが出向く際、風邪で同行できず。ヤンを失う。
同年8月8日 - イゼルローン共和政府の政治指導者に就任。シヴァ星域会戦後に解散するまで務める。

能力

ヤン艦隊の主要メンバーが認めるほどの驚異的な記憶力と情報処理能力を持ち、「コンピューターのまたいとこ」と称されます。ヤンの作戦を具体的な計算によって裏付け、補佐します。

イゼルローン幹部の中では常識的な人物であり、形式を重んじる一面も持ち合わせています。

白兵戦や射撃の能力については特筆されていませんが、いざという時には身を守るための術も心得ています。ノイエ版ではヤンを嘲笑したローゼンリッター隊員を投げ飛ばす描写もあります。

三次元チェスはユリアン・ミンツと互角の腕前です。

料理の腕前は壊滅的で、補給担当のキャゼルヌから食材を無駄にしないように料理を控えるように言われるほどです。サンドイッチ、ハンバーガー、クレープなど、挟むだけの料理は得意ですが、それ以外はキャゼルヌ夫人やユリアンに師事しました。ヤンの死の直前には、彼を満足させる紅茶を淹れることができました。

人柄

ヘイゼル色の瞳と金褐色の髪を持つ美しい女性として描かれています。アニメ版では髪の長さが異なり、石黒監督版では短髪、ノイエ版では長髪をまとめてベレー帽を着用しています。ユリアン・ミンツから密かに想いを寄せられていましたが、本人は気づいていませんでした。

温和な性格ですが、目的のためには努力を惜しまない芯の強さを持っています。常に激動の事態にさらされながらも、弱音を吐くことはありませんでした。ヤンを失った後も、イゼルローン共和政府の指導者を引き受け、多くの人々を魅了しました。

女性としての身だしなみにも気を配り、化粧も心得ています。ヘルムート・レンネンカンプの死を偽装する際には、死に顔をごまかす化粧を施しました。ヤンに対する愛情は深く、彼の怠惰な面すら愛していました。

家族

父親：ドワイト・グリーンヒル（救国軍事会議のクーデター後に死亡）
母親：原作では不明（石黒監督版OVAでは故人）
夫：ヤン・ウェンリー（結婚後約1年で死別）
* 実子：なし

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