フレンチタウンの戦い

フレンチタウンの戦い：米英戦争における悲劇

フレンチタウンの戦い（またはレーズン川の戦い、レーズン川の虐殺）は、1813年1月18日から23日にかけて、現在のミシガン州モンロー市付近で繰り広げられた一連の戦闘です。この戦いは、アメリカ軍とイギリス軍、そして同盟インディアンの間で発生し、米英戦争における最も悲惨な出来事の一つとして記録されています。

戦闘の経過

1813年1月18日、アメリカ軍はフレンチタウンを占領していたイギリス軍とインディアンを一時的に撤退させることに成功しました。これは、デトロイト奪還を目指すアメリカ軍の北方進軍作戦の一部でした。しかし、イギリス軍と同盟インディアンは態勢を立て直し、4日後の22日に反撃を開始しました。

この日の激戦で、アメリカ軍は397名の戦死者を出し、数百人が捕虜となりました。さらに翌日には、インディアンによる捕虜の虐殺が発生し、数十名が命を落としました。この一連の戦闘は、ミシガン州内で発生した戦闘としては最大の損失であり、米英戦争全体でも最も多くのアメリカ兵が戦死した戦いとなりました。

戦闘名の由来

「フレンチタウンの戦い」という名称は、戦場となったミシガン準州フレンチタウンに由来しますが、現在ではその大部分がモンロー市に含まれます。1月18日の戦闘は「第一次レーズン川の戦い」、22日の戦闘は「第二次レーズン川の戦い」と呼ばれることもあります。また、23日に発生した虐殺は「レーズン川の虐殺」として知られています。

戦闘の背景

1812年8月、アメリカ軍はデトロイト砦をイギリス軍に奪われ、ミシガン準州におけるイギリス軍の影響力が拡大しました。デトロイト砦奪還のため、アメリカ軍はジェイムズ・ウィンチェスター准将を指揮官とする部隊を派遣しますが、彼はウィリアム・ハリソン少将の指示に反し、フレンチタウンへと進軍します。

第一次レーズン川の戦い

1月18日、ウィリアム・ルイス中佐率いるアメリカ軍は、フレンチタウンにいたイギリス軍とインディアンを撃退し、一時的に町を奪還しました。しかし、この勝利は束の間のものでした。撤退するインディアンは、サンディクリークという小さな開拓地を襲撃し、家屋を焼き払い、住民を殺害しました。

第二次レーズン川の戦い

1月20日、ジェイムズ・ウィンチェスター准将がフレンチタウンに到着し、戦力を増強しました。しかし、ウィンチェスターの部隊は訓練不足で、防御態勢も不十分でした。1月22日、ヘンリー・プロクター准将率いるイギリス軍とインディアン連合軍が急襲を仕掛けました。アメリカ軍は混乱し、多数の戦死者を出しました。ウィンチェスター自身も捕虜となり、残存部隊は降伏を余儀なくされました。

レーズン川の虐殺

1月23日、アメリカ軍が降伏した後、インディアンは負傷した捕虜への略奪と虐殺を開始しました。負傷兵を収容していた建物に火が放たれ、逃げようとした者や動けない者が殺害されました。この虐殺は「レーズン川の虐殺」として知られ、アメリカ国民に深い衝撃を与えました。この虐殺事件は、この後の戦争でアメリカ兵の士気を高める要因の一つとなり、「レーズン川を忘れるな」というスローガンが使われました。

戦いの後

フレンチタウンの戦いでアメリカ軍は、戦死者、捕虜、行方不明者を含めて多数の損害を出しました。この敗北の責任は、準備不足と判断ミスを犯したジェイムズ・ウィンチェスター准将にほぼ全てが押し付けられました。しかし、この敗北はアメリカ軍の士気を奮い立たせ、後の勝利につながっていきます。戦場跡の一部は、現在レーズン川国立戦場跡公園として整備され、アメリカ合衆国国立公園局の管理下に置かれることが期待されています。

戦争の影響

この戦いでのアメリカ軍の敗北と捕虜虐殺は、アメリカ国内、特にケンタッキー州に大きな衝撃を与え、多くの志願兵を促すことになりました。また、この戦いに参加したケンタッキー州出身の士官の名前は、同州の郡名や、モンロー市の通りの名前にも使われています。

フレンチタウンの戦いは、米英戦争における悲劇的な出来事として、アメリカ史に深く刻まれています。

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