フロベールの鸚鵡

『フロベールの鸚鵡』

ジュリアン・バーンズの小説『フロベールの鸚鵡』は1984年に発表された作品で、フランスの文学巨匠ギュスターヴ・フロベールをテーマにしたポストモダン的な構造を持っています。この作品は、フロベールの遺品を通じて彼の過去や文芸活動を探求する老医師の視点から描かれています。

物語の語り手であるジェフリー・ブレイスウェイトは、キャリアを終えたイギリス人医師です。彼はフロベールに関する本を執筆するため、フロベールの故郷であるルーアンに訪れます。そこで語り手は、フロベールの父が経営していた病院跡にあるフロベール博物館を訪れ、剥製の鸚鵡を見つけます。この鸚鵡は、フロベールが短編「純な心」（『三つの物語』所収）の創作過程で参考としたものであり、博物館から借り受けられていました。

その後、語り手はフロベールと鸚鵡との深い関係について思索し始めますが、数日後にはフロベールが居住していたクロワッセでも同じく鸚鵡の剥製を発見します。この二つの鸚鵡のどちらが本物であるのか疑問を抱いた語り手は、更なる真実を探るために専門家に手紙を送り、答えを求めます。

作品全体は15の章に分かれており、語り手の随想や思索が主な骨組みを成しています。各章は異なる形式を持ち、年譜、博物誌のスタイル、小説のパロディや試験の形式にいたるまで、多様な語りのスタイルで構成されています。このような構造によって、物語はフロベールに関するさまざまな出来事や情報を自由に展開し、読者に新たな視点を提供します。

ジュリアン・バーンズにとってこの作品は3作目となり、発表後には多くの賞にノミネートされました。1984年度のブッカー賞にノミネートされ、1985年度にはジェフリー・ウェイバー記念賞を受賞。さらに、1986年度にはメディシス賞（外国小説部門）、1987年度にはグーテンベルク・ベスト・エッセー賞を受賞し、その評価は国際的なものとなりました。

『フロベールの鸚鵡』は単なる小説にとどまらず、文学と創作の意味に対する考察をも含んでいます。バーンズは、フロベールの作品や生涯に多面的にアプローチすることで、読者に深い洞察を促す試みを行っています。この作品は、文学の背後に潜む複雑な真実や、作家の創作過程についての探求を示す重要な作品です。

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