フーリエ変換赤外分光法

フーリエ変換赤外分光法（FT-IR）

フーリエ変換赤外分光法（Fourier Transform Infrared Spectroscopy、略称FT-IR）は、物質の分子構造を解析するための強力な分析技術です。物質に赤外線を照射し、その吸収パターンを解析することで、分子の種類や構造、そしてその状態に関する詳細な情報を得ることができます。この技術は、1970年代に大きく発展し、レーザー光による波数モニタリング、移動鏡を備えた干渉計、そしてコンピュータによるデータ処理システムを組み合わせることで、高精度な測定を可能にしました。

FT-IRの原理

FT-IR分光計は、広い範囲のスペクトルデータを高分解能で同時に収集することができます。従来の分散型分光計が狭い波長範囲ずつ測定するのに対し、FT-IRは一度に広範囲を測定できるため、分析効率が大幅に向上します。この技術の名称にある「フーリエ変換」は、測定された干渉データを実際のスペクトルに変換するためにフーリエ変換という数学的な処理が必要であることに由来します。

赤外吸収スペクトルと分子構造

赤外線の吸収スペクトルは、分子の振動運動と密接に関係しています。分子は特定のエネルギー、特に赤外線領域のエネルギーを吸収し、そのエネルギーは分子の運動エネルギーとして消費されます。ただし、全ての分子が赤外線を吸収するわけではありません。赤外線を吸収するためには、分子が双極子モーメントを持つ必要があります。この性質を「赤外活性」といいます。物質を透過した赤外線は、照射された赤外線よりも減衰しており、この差が分子の振動や回転の励起に使われたエネルギーに相当します。

分子の振動挙動は、原子の種類や大きさによって異なるため、赤外吸収スペクトルは化合物ごとに固有のパターンを示します。この特性を利用することで、FT-IR分光法は様々な用途に利用されています。

FT-IRの応用例

FT-IR分光法は、以下のような研究や分析に利用されています。

分子、イオン、結晶の構造、分布、反応の研究
分子の励起状態や反応中間体の研究
未知物質の定性分析、物質の同定
混合物の定量分析
化学反応のモニタリング

FT-IRは、高分子材料、医薬品、食品、環境試料など、多岐にわたる分野で利用されています。非破壊で迅速な分析が可能であるため、品質管理やプロセス管理にも適しています。

関連項目

熱赤外分光法
* 近赤外線分光法

FT-IRは、物質科学における不可欠なツールとして、これからも発展し続けるでしょう。

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