フール・フォー・ザ・シティ

フール・フォー・ザ・シティ：禁じられた音楽の調べ

22世紀。かつての大戦争によって荒廃した地球は、地球連邦という統一国家によって管理されていた。人々は平和な生活を送っていたが、それは管理された平和であり、芸術や宗教といった人間の心を揺さぶる文化は厳しく弾圧され、歴史から抹消されていた。

この管理社会の影で、弾圧から逃れた芸術家たち「サクセサー」は、地下で文化を継承していた。しかし、彼らは次第に連邦政府の弾圧によって数を減らしていった。

そんな時代、若者を中心に構成される人気音楽バンド「スーパーノヴァ」は、偶然にも最後のロック・サクセサーであるアラニア・シャンカールと出会う。ロックミュージックが禁止されている世界で、彼女との出会いは、彼らにとって衝撃的な出来事となる。

アラニアは、家族を殺された過去と、ロックという文化への反発から、心の壁を高く築いていた。しかし、スーパーノヴァのメンバー、特にボーカル兼ビートリズマーのラスやメロダーのマコトとの交流を通して、彼女は次第にロックの持つ力、人間の心を動かす音楽の素晴らしさを取り戻していく。

特に、マコトは、アラニアの父親が残した「FOOL FOR THE CITY」というロックナンバーに触れ、その音楽に強い感銘を受けていた。彼は、いつかその曲を自分のものとして歌いたいと夢見ていたのだ。

物語は、スーパーノヴァとアラニアを中心に展開していく。彼らは、政府機関「メトロポール」の圧力や、ロックを否定する社会の抵抗に立ち向かいながら、音楽を通して人々の心を解放しようと奮闘する。

バンドメンバーの個性も鮮やかだ。プレイボーイ気質のイアン、リーダーシップを発揮するスティーブ、そしてサポートに回るプロデューサー、サイモン。彼らそれぞれが、アラニアやラスと共にある出来事を経験し成長していく姿が描かれている。

一方、メトロポールは、連邦政府を統括するマザーコンピューター「ドウター」の意向に従い、ロックミュージックの復活を阻止しようと、あらゆる手段を使ってスーパーノヴァを妨害する。メトロポールを操るログナーは、ドウターによって作られた「マシン・チャイルド」であり、絶対的な権力を持って人々を支配していた。

物語には、レジスタンス組織や、旧時代のバイクに乗るスケープゴウトといった、様々な勢力が登場する。彼らは、それぞれ異なる形で、管理された社会に抵抗し、自由を求めて戦っている。

そして、物語のクライマックスでは、スーパーノヴァは、ロックミュージックの力で、人々の心に響くメッセージを届ける。それは、管理された平和の裏側にある、抑圧された人間の感情を解放する、希望のメッセージだった。

主要登場人物:

ラス (ラッセル・コール): スーパーノヴァのボーカル兼ビートリズマー。アラニアと恋仲になる。
アラニア・シャンカール・アンダーソン: 最後のロック・サクセサー。物語のヒロイン。
マコト (エドワード・マコト・カネコ): スーパーノヴァのメロダー兼ボーカル。ラスの親友。
イアン・マクドナルド: スーパーノヴァのメロダー。
スティーブ・フリップス: スーパーノヴァのリズマー。
サイモン・オフロード: スーパーノヴァのプロデューサー。
アニマル・ドーシー: スケープゴウトのリーダー。
ログナー (ファルク・U・ログナー): メトロポールの事実上の最高権力者。
ソーニャ・カーリン: ログナーの片腕。
ドウター: 地球連邦を統括するマザーコンピューター。

舞台設定と音楽:

物語の舞台は、高度な情報管理技術が導入された近未来都市。ロックミュージックは禁止されており、許可された音楽はポップスや歌謡曲に限られている。楽器もデジタル化され、ドラムは「リズマー」、ギターは「メロダー」など、名称も変わっている。ライブも、大音量のスピーカーではなくイヤホンを通して音楽を聴くスタイルとなっている。

この作品は、永野護の漫画家としてのデビュー作であり、後の代表作である『ファイブスター物語』につながる要素も多く含まれている。また、作中には『重戦機エルガイム』へのオマージュも散見されるなど、作者の遊び心も感じられる作品となっている。

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