ブッカー・T&ザ・MG's

ブッカー・T&ザ・MG's（Booker T. & The M.G.'s）は、アメリカ合衆国南部のテネシー州メンフィスで活動を展開した、ソウルおよびR&Bを基盤とするインストゥルメンタル・グループです。

結成とメンバー変遷

このバンドは、メンフィスの名門レーベル、スタックス・レコードの専属スタジオ・バンドとして誕生しました。中心人物はオルガン奏者のブッカー・T・ジョーンズで、ギタリストのスティーヴ・クロッパー、ベーシストのルイス・スタインバーグ、そしてドラマーのアル・ジャクソンが初期の主要メンバーでした。その後、1964年後半にはベーシストがドナルド・ダック・ダンに交代し、このラインナップがバンドの黄金期を支えることになります。

成功と主要活動

彼らは自身の楽曲でも大きな成功を収めました。特に、1962年に発表したデビュー・シングル「グリーン・オニオン（Green Onions）」は、ビルボードのR&Bチャートで第1位、ポップ・チャートでも第3位を記録する大ヒットとなりました。このインストゥルメンタル曲は、そのファンキーなグルーヴと印象的なオルガンリフで、彼らの名を広く知らしめました。

自身の代表曲としては、「ハング・エム・ハイ（Hang 'Em High）」、「タイム・イズ・タイト（Time Is Tight）」、「メルティング・ポット（Melting Pot）」、「Soul Limbo」などが挙げられます。これらの楽曲は、彼らの演奏力の高さと、独特のサウンドスタイルを示しています。

また、ブッカー・T&ザ・MG'sの最も重要な役割の一つは、スタックス・レコードのハウスバンドとして、数多くのアーティストのレコーディングを支えたことです。オーティス・レディング、ジョニー・テイラー、ウィルソン・ピケット、サム&デイヴといった、同レーベルや関連アーティストのヒット曲のバックで演奏し、メンフィス・サウンドの形成に不可欠な存在となりました。例えば、ジョニー・テイラーのヒット曲「フーズ・メイキン・ラブ」（1968年）なども、彼らの演奏が光る一例です。さらに、ギタリストのスティーヴ・クロッパーは、オーティス・レディングの「ドック・オブ・ザ・ベイ」や、エディ・フロイドの「ノック・オン・ウッド」といった名曲のソングライティングにも携わっています。

その後の展開と功績

バンドは1971年にアルバム「メルティング・ポット」を発表した後、一度解散しましたが、その後1977年と1994年に再結成を果たしています。メンバーの晩年については、ドラマーのアル・ジャクソンが1975年に悲劇的な事件の犠牲となって亡くなり、ベーシストのドナルド・ダック・ダンも2012年に来日公演中に急逝するという出来事がありました。オルガンのブッカー・T・ジョーンズは、ミュージシャンとしても活動を続け、一時期はリタ・クーリッジの姉プリシラと共にデュオとしても活動しました。

彼らの音楽的な功績は高く評価されており、1992年にはロックの殿堂入りを果たしました。また、ローリング・ストーン誌が選ぶ「歴史上最も偉大な100組のアーティスト」では第93位にランクインしています。

日本においても、1992年のボブ・ディランのデビュー30周年記念特別公演でハウスバンドを務めたほか、日本のミュージシャンである忌野清志郎のアルバム『Memphis』のレコーディングに参加。さらに、忌野清志郎の日本武道館公演や全国ツアーにも帯同し、ブッカー・T&ザ・MG's自身の楽曲や、彼らがサポートしたオーティス・レディングなどの曲を演奏し、その模様はライブ・アルバム『HAVE MERCY!』としてリリースされています。

代表的なアルバム

Green Onions (1962)
Soul Dressing (1965)
Hip Hug-Her (1967)
Soul Limbo (1968)
Melting Pot (1971)
That's The Way It Should Be (1994)

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