ブドウ球菌

ブドウ球菌について

ブドウ球菌（Staphylococcus属）は、直径約1µmのグラム陽性球菌であり、主にクラスター状に集合して増殖します。その特長ある形状から「ブドウの房」のように見えるため、こう名付けられました。これは、ラテン語で「ブドウの房」を意味する「staphylo-」と、「球菌」を意味する「coccus」から由来しています。

特徴

ブドウ球菌は主に通性嫌気性であり、多くの環境で耐塩性を持つために、幅広い条件下で生育可能です。特に、35〜40℃の温度で良く生育し、寒天培地上では黄色やピンクの色素を産生します。これにより、寒天上のコロニーは、さまざまな色調を示すことがあります。また、抗菌薬に耐性を示す菌株も存在し、特にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌（MRSA）は、感染症のリスクを高める問題となっています。

分類

ブドウ球菌属の細菌には、現在35の菌種が分類されています。かつてはコロニーの色によって分けられていましたが、後の研究によりコアグラーゼの産生有無に基づく分け方が普及しました。コアグラーゼを産生する黄色ブドウ球菌は病原性が高く、コアグラーゼ陰性の種類も存在しますが、これらは通常、ヒトに対しての病原性は低いとされています。

エンテロトキシンとその影響

特に黄色ブドウ球菌は、エンテロトキシンと呼ばれる毒素を生成することがあります。この毒素は熱や消化酵素に耐性があり、加熱しても破壊されないため、食中毒の原因となることがあります。また、これらの菌が体内で増殖した場合には、さまざまな感染症の原因となることもあります。これは、敗血症や毒素性ショック症候群（TSS）など、非常に深刻な病状を引き起こすことがあります。

主な種類

ブドウ球菌は多くの種が存在し、例えば黄色ブドウ球菌（Staphylococcus aureus）は、最も病原性が高いとされ、鼻腔や皮膚に常在しています。この菌は化膿性疾患を引き起こすことがあり、また特定の香りの生成にも寄与しています。一方、表皮ブドウ球菌（Staphylococcus epidermidis）は主に非病原性ですが、体内に侵入すると病原性を示すことがあります。また、腐性ブドウ球菌（Staphylococcus saprophyticus）は特に女性の尿路感染症に関連しています。

まとめ

ブドウ球菌は、細菌の中でも特に多様性に富んだグループであり、さまざまな病原性を持つ種が含まれています。日常生活の中で遭遇することの多い菌であるため、正しい知識を持つことが重要です。感染症を防ぐためには、手洗いや衛生的な取り扱いが必要です。また、抗菌薬の適切な使用を心掛け、耐性株の増加を抑えることが求められます。

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