ブライアン・マルルーニー

マーティン・ブライアン・マルルーニー

マーティン・ブライアン・マルルーニー（Martin Brian Mulroney、1939年3月20日 - 2024年2月29日）は、カナダの政治家で、第24代首相を務めました（在任期間：1984年9月17日 - 1993年6月25日）。彼は進歩保守党に所属し、アイルランド系の背景を持っていました。

政治家への道

1939年3月20日、マルルーニー氏はケベック州ベイ・コモーに生まれました。法曹としての道を歩んだ後、政界に入ります。彼が進歩保守党の党首に選出された際、特筆すべきは、それまで国政における政治家としての実務経験がなかったことです。しかし、党のリーダーとして力を発揮し、首相の座を目指しました。

首相就任と長期政権

1984年、マルルーニー氏は総選挙での勝利を経て、カナダの首相に就任しました。彼の政権は9年間にわたり、カナダの国内外政策に大きな影響を与えました。

経済政策と自由貿易

マルルーニー政権の経済政策は、前政権からの明確な転換を示しました。先行する自由党のピエール・トルドー政権が、アメリカへの経済的依存から脱却し、自立を志向する路線を採っていたのに対し、マルルーニー政権は親米的な立場を強め、経済の対外開放を推進する方向へと舵を切りました。その最も象徴的な成果は、アメリカ合衆国との間に自由貿易協定（Canada–United States Free Trade Agreement, CUSFTA）を締結したことです。この協定は、両国間の貿易障壁を低減し、経済連携を強化することを目的としていました。

さらに、この米加FTAは、その後にメキシコも加わって形成された北米自由貿易協定（North American Free Trade Agreement, NAFTA）へと発展するための重要な基盤となりました。NAFTAの発効により、カナダ、アメリカ、メキシコの間に広大な自由貿易圏が生まれ、北米大陸全体の経済構造に長期的な影響を与えることになりました。マルルーニー氏の主導した自由貿易政策は、現代カナダ経済史における重要な一章を占めています。

晩年と逝去

首相退任後も、マルルーニー氏は公的な活動に関わることがありました。晩年には健康上の課題を抱え、2023年には前立腺がんと心臓の手術を受けましたが、伝えられるところによれば、回復に向かっていたとのことです。

しかし、2024年2月29日、彼は84歳でその生涯を終えました。死去場所は、治療のため入院していたフロリダ州パームビーチの病院でした。直接のきっかけは、病状悪化ではなく、以前の病気とは別の転倒による負傷が原因で治療を受けていたことだったと報じられています。

マーティン・ブライアン・マルルーニー氏は、政治経験の乏しい状態から首相に上り詰め、特に北米の自由貿易圏形成に深く関与した指導者として記憶されています。

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