ブラウン方式

ブラウン方式とは

ブラウン方式は、図書館における図書貸出方式の一つで、カード式貸出法に分類されます。考案者の名前から「ブラウン方式」と呼ばれており、貸出券の独特な形状から「袋形貸出方式」とも呼ばれます。この方式は、貸出券、ブックカード、返却期限票を組み合わせることで、貸出記録を作成します。大きな特徴として、「記入する必要がない」ことと、「貸出記録が返却時に消滅する」ことが挙げられます。

歴史

ブラウン方式は、アメリカの図書館員ニーナ・E・ブラウンによって考案され、1885年に発表されました。その後、イギリスのジェームス・ダフ・ブラウンが改良を加えました。日本においては、日本図書館協会が導入を推奨したため、1980年代には貸出方式のデファクトスタンダードとなりました。しかし、2000年以降はコンピュータ方式が主流となり、採用する図書館は減少傾向にあります。

手続き

ブラウン方式の基本的な手続きは以下の通りです。

1. 構成要素:
ブックカード: 図書の情報が記載されたカード。
ブックポケット: ブックカードを保管する袋。
返却期限票: 返却期限が記載された用紙。
貸出券: 利用者の情報が記載されたカード。
2. 貸出:
利用者は、借りたい図書と貸出券を図書館員に提出します。
図書館員は、返却期限票に返却日を記入し、ブックポケットからブックカードを抜き出して貸出券に挿入します。
貸出記録は、返却期日順に保管します。
図書は利用者に貸し出されます。
3. 返却:
利用者は、図書を図書館員に返却します。
図書館員は、返却された図書の貸出記録を探し出し、ブックカードを図書のブックポケットに戻します。
貸出券は利用者に返却します。
4. 予約:
利用者が図書を予約した場合、図書館員は書架と貸出記録の両方を確認します。
貸出中の場合は、貸出記録に予約を示すカードを挿入します。
5. 督促:
返却期限が過ぎた図書の貸出記録を元に、利用者に督促を行います。

特徴

ブラウン方式には、以下のような利点と欠点があります。

利点

簡便さ: 手続きが簡単で、機械的な作業で済むため、図書館員や利用者が理解しやすい。
迅速性: 記入作業がないため、貸出・返却手続きが速い。
秘匿性: 貸出記録が返却時に消滅するため、利用履歴が他人に知られるリスクが低い。
予約・督促: 予約や督促処理が可能で、漏れが少ない。
拡張性: 貸出冊数や期間の制限を設けるなど、柔軟な運用が可能。

欠点

規模の上限: 貸出記録が増えると、返却・予約時の検索に時間がかかり、大規模図書館には不向き。
返却時の待ち時間: 貸出記録を探すまで利用者を待たせる必要があり、返却ポストの設置が難しい。
記録の消失: 貸出記録が消滅するため、統計調査が不可能。

ブラウン方式の変形方式

ブラウン方式の欠点を改善するために、様々な変形方式が開発されました。

逆ブラウン方式: 貸出券とブックカードの形状を逆にした方式。
貸出記録の抜き取り時の事故防止や、貸出券の耐久性向上が期待できる。
回数券方式: 貸出券を使い捨ての回数券にした方式。
返却時の待ち時間がなく、返却ポストの導入が容易になる。
一括ブラウン方式: 利用者に図書を紐付ける方式。
複数冊の貸出記録を一箇所にまとめられるため、貸出・返却・督促が容易。
中小レポート方式: 貸出券をブックポケットで、ブックカードを目録カードで代用する方式。
導入の手間が少ないという利点がある。

まとめ

ブラウン方式は、その簡便さと利用者のプライバシー保護という点で優れた貸出方式でした。しかし、コンピュータ化の進展に伴い、その役割は徐々に終えつつあります。しかしながら、その基本的な考え方は、現在の図書館システムにも影響を与えています。

もう一度検索