ブラジュロンヌ子爵

『ブラジュロンヌ子爵』の概要

『ブラジュロンヌ子爵』（フランス語: Le Vicomte de Bragelonne）は、アレクサンドル・デュマ・ペールによる歴史小説で、「ダルタニャン物語」シリーズの第三部にあたります。1847年から1850年にかけてフランスの新聞『シエークル』で連載され、1660年からダルタニャンの戦死までの物語が描かれています。この作品は、続編である『二十年後』からさらに十年後の設定となっており、特に「十年後」という副題が与えられています。

物語は、主人公がダルタニャンではなくアトスの息子、ブラジュロンヌ子爵ラウルに焦点を当てていますが、依然としてダルタニャンや三銃士たちが物語の中心を占める構成になっています。

物語の始まり

物語の冒頭では、清教徒革命によりイギリスを追われたチャールズ2世がフランスにやってきます。彼はルイ14世に助けを求めるものの、宰相ジュール・マザランの権力が強く、逆に追い返されてしまいます。この光景を目にしたダルタニャンは、老齢でありながら再度の挑戦を決意し、チャールズ2世の復位に尽力するためイギリスに渡ることを決めます。同時に、元三銃士のアトスも彼に手を貸そうとします。

イギリス王政復古が成功したことで、アンリエット姫とルイ14世の弟フィリップとの結婚が実現しますが、ルイ14世とアンリエットの間に不倫関係が生まれるという複雑な状況が展開します。さらに、ダルタニャンと三銃士の中での恋愛の葛藤が描かれ、ラウルはかつての恋人ルイズに対する感情に苦しむことになります。

登場人物たち

• - ラウル: 主人公でアトスの息子。自らの恋に悩みつつ、物語に深く関与しています。
• - ダルタニャン: 本作でも実質的な主人公であり、老齢ながらも活躍を続けます。
• - アトス: かつてのリーダー的な存在で、英国に対する理解を持つようになっています。
• - ポルトス: 前の三銃士たちのムードメーカーでありながらも、老齢に悩んでいます。
• - アラミス: 聖職者となった元三銃士で、陰謀に関与しています。
• - ニコラ・フーケ: 財務長官で、ダルタニャンやアラミスとの絡みが重要です。
• - ルイ14世: フランス王であり、物語の重要人物です。
• - 鉄仮面: 謎に包まれた囚人で、ストーリーに影響を与えます。

物語のテーマ

本作品は「死」というテーマが色濃く描かれており、古参キャラクターたちが老いによる苦悩と向き合っていく様子が印象的です。また、若者の非業の死を通して、人生の儚さも強調されています。作品はダルタニャンの死をもって完結し、彼の歴史的な位置づけを示すことになります。

『ブラジュロンヌ子爵』は、愛と忠誠、裏切り、そして死といった複雑な感情が交錯するドラマティックな作品であり、歴史的背景を踏まえながらも普遍的な人間ドラマを描いています。

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