ブラックスター (デヴィッド・ボウイのアルバム)

デヴィッド・ボウイの遺作にして最高傑作『Blackstar (★)』

2016年1月8日、音楽史にその名を刻むアーティスト、デヴィッド・ボウイは69歳の誕生日、そしてその2日後にこの世を去りました。彼の最後のスタジオアルバムとなった『★(Blackstar)』は、まさに彼の音楽人生の集大成とも言うべき、奇跡の作品として後世に語り継がれることでしょう。

本作は、ISOレーベルよりリリースされ、ジャズ・バンド、マリア・シュナイダー・オーケストラのメンバーであるダニー・マッキャスリンやジェイソン・リンドナーなど、実力派ミュージシャンが参加。前作『The Next Day』に続く、ニューヨークのThe Magic ShopとHuman Worldwide Studiosでの極秘レコーディングにより、独特の世界観を作り上げています。

アルバムのタイトル曲「★(Blackstar)」は、2015年11月19日に先行シングルとしてリリースされ、テレビドラマ『The Last Panthers』のオープニングテーマとして使用されたことも記憶に新しいです。さらに、2つ目のシングル「Lazarus」は同年12月17日にデジタルダウンロードでリリースされ、BBC Radio 6でワールドプレミアという華々しいデビューを飾りました。

『Blackstar』は、批評家からの絶賛を浴び、イギリスやアメリカを始めとする複数国でチャート1位を獲得。音楽的な評価と商業的成功の両面で大きな成功を収めたことは、ボウイの偉大さを改めて証明する結果となりました。

レコーディングは、前作に引き続き極秘裏に進められました。アルバム収録曲のデモ制作は『The Next Day』完成直後から開始されており、すでに発表されていた「Sue (Or in a Season of Crime)」と「'Tis a Pity She Was a Whore」も、このアルバムのために再録音されています。「'Tis a Pity She Was a Whore」では、ボウイ自身の演奏だったサックスパートを、ダニー・マッキャスリンが新たに録音し、作品に深みを与えています。

マッキャスリンを始めとするジャズミュージシャンたちは、2015年1月から3月にかけて、月に1週間のペースでレコーディングに参加しました。興味深いことに、彼らはボウイの病気については全く知らなかったそうです。

プロデューサーのトニー・ヴィスコンティによると、本作はケンドリック・ラマーの『To Pimp a Butterfly』、ボーズ・オブ・カナダ、デス・グリップスの影響を受けているとのこと。また、ヴィスコンティは、このアルバムがボウイにとってのスワンソング、つまりファンへの最後の贈り物だったとも語っています。

ビルボードやCNNの記事では、ボウイの歌詞に自身の死への予感や葛藤が見て取れると指摘されています。CNNは、この作品を「自身の死の運命と組み合った男の姿を表している」と表現しました。

アルバム2曲目「'Tis a Pity She Was a Whore」のタイトルは、17世紀のイギリスの劇作家ジョン・フォードの戯曲『あわれ彼女は娼婦』に由来すると言われています。

アートワークは、以前にもボウイの作品を手掛けたジョナサン・バーンブルックが担当。真っ白な背景に大きな黒い星、そして下部に「BOWIE」を思わせる星型のマークが配置された、シンプルながらも印象的なデザインとなっています。レコード版は、カバーの星型部分がくり抜かれ、レコードが見える独特の仕様です。

特筆すべきは、ジャケットにボウイ本人が登場していない点です。『The Man Who Sold The World』のアメリカ版と『The Buddha of Suburbia』のイギリス版を除けば、初めてのことです。

そして、アルバム発売と同時に全曲がYouTubeに公式アップロードされ、デジタル配信版には「Blackstar」のミュージックビデオも収録されています。

『Blackstar』は、デヴィッド・ボウイという稀代のアーティストの才能と、人生の集大成が凝縮された、まさに伝説的な作品と言えるでしょう。その音楽は、これからも多くの人々を魅了し続けることでしょう。

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