ブラック・ダリア (映画)

ブラック・ダリア

『ブラック・ダリア』（The Black Dahlia）は、2006年に公開されたアメリカの犯罪ミステリ映画で、実際に1947年にロサンゼルスで発生した「ブラック・ダリア事件」を題材にしています。この事件をもとにしたのはジェイムズ・エルロイの同名小説であり、映画は彼のLA四部作の第一作にあたります。監督は名匠ブライアン・デ・パルマが務めています。

ストーリーの概要

物語は、ロサンゼルス市警に勤務する元ボクサーのバッキー・ブライカート（ジョシュ・ハートネット）と、同じく元ボクサーのリー・ブランチャード（アーロン・エッカート）を中心に進行します。彼らは署内のボクシング大会をきっかけに相棒となり、共に捜査に励む中で、親友として深い絆を築いていきます。リーは過去に強盗事件を阻止した経験を持ちながらも、銃撃戦で知人を射殺したことに強い心的苦痛を抱えています。

ある日、ロサンゼルスで女優志望の少女エリザベス・ショート（ミア・カーシュナー）が残虐な方法で命を奪われる事件が発生します。彼女は普段から黒いドレスを着ていたため、世間から「ブラック・ダリア」と呼ばれるようになりました。バッキーとリーは、この猟奇的な事件の捜査に乗り出しますが、リーは自身の妹が幼い頃に行方不明になった過去から、この事件に異常なまでの関心を寄せます。

【エリザベス・ショートとマデリン・リンスコット】

捜査が進むうちに、バッキーはエリザベスと瓜二つのマデリン・リンスコット（ヒラリー・スワンク）と出会います。マデリンは裕福な家庭の娘で、世間体を気にして自分の存在を隠すことをバッキーに求めます。彼女との関係が深まる中、バッキーは次第にマデリンに心奪われていくのです。

一方、リーは釈放された強盗犯と争った末に命を落としてしまいます。この事態に直面したバッキーは、親友の冤罪を晴らすために犯人を追い詰めていき、同時にブラック・ダリア事件の暗い裏側に迫っていきます。

映画のテーマとキャラクター

この映画は単純な犯罪映画ではなく、バッキーとリー、ケイ（スカーレット・ヨハンソン）との人間関係の深さや、町の腐敗した警察組織の内部に迫る様子が描かれています。バッキーは、リーとの友情やケイへの想いの間で揺れ動きながら、ブラック・ダリア事件の真相を追い求める姿が印象的です。

俳優たちの演技も高く評価されており、ジョシュ・ハートネットの冷静さやアーロン・エッカートの多面的なキャラクター描写が映画を引き立てています。特に、リーの過去や弱さが浮き彫りになることで、物語はより深みを増していきます。ケイは感情的な立場から、バッキーとリーとの関係に思い悩むキャラクターであり、物語に複雑さを与えています。

制作背景

『ブラック・ダリア』は、第63回ヴェネツィア国際映画祭でオープニング上映され、日本国内でも注目される作品となりました。デヴィッド・フィンチャーが監督を予定していたという事実や、キャスティング時の話も映画制作の歴史において重要なポイントです。撮影はロサンゼルスとブルガリアで行われ、独特の雰囲気を醸し出しています。

この作品は、元の小説の詳細な心理描写を省略しつつも、キーとなる人間関係や事件の暗部に焦点を当てた脚本になっているため、原作ファンにも新たな視点を与える形となりました。また、バッキーがエリザベスの人生を解き明かしつつ、彼女に対する理解を深めていく様子が描かれ、観る者に思索を促す要素を含んでいます。

このように『ブラック・ダリア』は、エンターテインメント性の高い作品でありながら、深いテーマを内包した重厚なドラマでもあると言えるでしょう。

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