ブラフ・シューペリア

ブラフ・シューペリア（Brough Superior motorcycles）

ブラフ・シューペリアは、かつてイギリスに存在したオートバイメーカーで、その卓越した性能と品質から「オートバイのロールスロイス」と称されました。日本では、ブラフ・シュペーリア、ブラウ・シューペリア、ブロウスペリアなど、表記にいくつかのバリエーションが見られますが、単に「ブラフ」と呼ばれることもあります。

創業と特徴

1919年、ジョージ・ブラフ（George Brough）が、父親であるウィリアム・E・ブラフ（William E. Brough）のオートバイ製造会社から独立する形で創業しました。ブラフ・シューペリアの最大の特徴は、顧客の要望に合わせたカスタムメイドのオートバイを製造していた点です。そのため、同じ構成のバイクは二つとないと言われています。

製造プロセスは非常に丁寧で、まず全ての部品を組み立て、その後分解して塗装やメッキ加工を行い、再度組み立てるという手間のかかるものでした。完成したバイクは全てジョージ・ブラフ自身がテストを行い、仕様に応じた認定を与えられました。もし仕様を満たさない場合は、再度作り直すという徹底ぶりでした。この徹底した品質管理が、ブラフ・シューペリアの高い評価につながっています。

1940年にオートバイの生産を終了しましたが、その後も自社マシンのレストア事業を継続し、第二次世界大戦中はロールス・ロイスの航空機エンジン部品の製造も行っていました。しかし、戦後のイギリス経済の復興が遅れたこともあり、1950年代半ばに会社は閉鎖されました。創業から21年間で、19モデル・3,048台のオートバイを製造しました。

ブラフ・シューペリアの主な車種

初期モデルには、ブラフ・シューペリアMark I（サイドバルブまたはオーバーヘッド）、Mark II、Mark IIスポーツがあります。また、中期にはオーバーヘッド500、680、SV5.15、750サイドバルブなどが製造されましたが、人気がなく生産中止となりました。

以下の4つのモデルは、ブラフ・シューペリアの製造を代表するもので、ほとんどがカスタムオーダーで製造されました。それぞれのモデルには多数のバリエーションが存在します。

SS80（スーパースポーツ）: J.A.P.またはマチレス製の1,000ccサイドバルブ空冷V型2気筒エンジンを搭載。1922年から1940年までに約1,086台が生産されました。
SS100（スーパースポーツ）: J.A.P.またはマチレス製の1,000ccサイドバルブ空冷V型2気筒エンジン、または空冷4ストロークOHV-V型2気筒エンジンを搭載。1924年から1940年までに約383台が生産されました。
SS680 OHV（スーパースポーツ）: J.A.P.製の680cc空冷4ストロークOHV-V型2気筒エンジンを搭載。1926年から1936年までに約547台が生産されました。
11.50: J.A.P.製の1,096ccサイドバルブ空冷60°V型2気筒エンジンを搭載。主にサイドカーや警察用に使用され、1933年から1940年までに約308台が生産されました。

他にも、多くの実験モデルやショーモデル、レーシングモデルが製造されました。

Golden Dream: 996ccOHV-H型4気筒エンジンを搭載。ジョージ・ブラフによって「フラット縦型」エンジンと呼ばれ、1938年にロンドンのアールズコートモーターサイクルショーに出展されました。1938年から1939年に生産されました。
Brough Superior Austin Four: 797ccサイドバルブ直列4気筒エンジンを搭載。これはオースチン7の自動車エンジンを修正したもので、1920年代から30年代において、4気筒バイクを提供した唯一の英国メーカーでした。1932年から1934年に生産されました。
Pendine: 空冷4サイクルOHV45°V型2気筒エンジンを搭載。1930年代初頭に生産され、時速180キロの最高速度を保証していました。SS100モデルとは異なるエンジン性能をベースにしています。レーサーのバリー（Baragwanath）が過給機を設置した車両は、現在「Barry's Big Blown Brough」として知られています。

速度記録

1924年には、ハーバート・ル・バック（Herbert Le Vack）がオートバイ単独とサイドカー付きでの世界速度記録を樹立しました。1937年には、エリック・C・ファーニホフ（Eric C. Fernihough）が単独とサイドカー付きでの世界記録を更新しています。

自動車の生産

1936年から1939年にかけては、「Brough Superior Automobiles」ブランドで自動車のアセンブリ生産も行われました。生産台数は85台でした。

トリビア

実話: トーマス・エドワード・ロレンスは、ブラフ・シューペリアのオートバイを愛し、7台乗り継ぎました。8台目の納車を目前に控えていた時に、ブラフを運転中の事故で意識不明となり死去しました。
創作:
アニメ『キノの旅』に登場する主人公の相棒「エルメス」は、ブラフ・シューペリア SS100がモデルとなっています。
アニメ『機甲創世記モスピーダ』に登場するイエロー・ベルモントのライドアーマー「ブロウスーペリア」は、ブラフ・シューペリアをモチーフにしています。
漫画『ああっ女神さまっ』では、主人公の祖父の愛車として登場し、修理されるシーンがあります。
小説『ストライクウィッチーズ スオムスいらん子中隊』には、エリザベス・F・ビューリング少尉がブラフ・シューペリアに乗る場面が登場します。

商標の復活

21世紀に入り、フランス人実業家ティエリー・アンリエット（Thierry Henriette）がブラフ・シューペリアの商標権を取得し、2013年にミラノEICMAで試作車を展示しました。2016年より生産が開始され、南フランスのトゥールーズ近郊に製造拠点が置かれています。

外部リンク

Brough Superior Club
* Brough Superior（復活企業公式サイト（英語））

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