ブルワース

ウォーレン・ベイティが監督・脚本・主演を務めた1998年のアメリカ映画『ブルワース』は、政治風刺とブラックユーモアが絶妙に融合した、予測不能な展開が魅力のコメディです。

カリフォルニア州選出の民主党上院議員、ジェイ・ブルワースは、若きポピュリスト候補の挑戦を受け、政治に倦み、人生に絶望しています。かつてはリベラルだった彼も、時の流れと共に保守的な立場へと傾き、大企業からの献金を受け入れるようになっていました。妻との間には長年の不倫関係があり、表向きは幸せな夫婦を演じています。

ブルワースは自殺を決意し、娘を受益者とした高額な生命保険契約を結び、さらに暗殺者まで雇います。しかし、酔っぱらって参加した選挙イベントで、C-SPANのカメラの前で本音を吐露したことから事態は急変します。彼の率直で攻撃的な発言はメディアの注目を集め、選挙運動に新たな活気を与えます。

ブルワースは若い黒人活動家ニーナと恋に落ち、彼女の協力を得ながら選挙運動を続けます。同時に、暗殺者、パパラッチ、選挙スタッフ、そして熱狂的な支持者たちに追いかけられる日々を送ることになります。

彼はテレビ討論会で酒を飲みながら医療制度を批判したり、貧しい地域で麻薬取引を目撃したり、人種差別的な警察官と対決したりと、破天荒な行動を繰り返します。ニーナの兄が関わる麻薬組織との関わりも複雑に絡み合います。

ブルワースは、自分を追いかける男を暗殺者と思い込み恐怖に怯えますが、その男は実はパパラッチだと判明します。ニーナも実は雇われた暗殺者でしたが、任務を放棄し、ブルワースと共に逃亡します。一安心して眠りについたブルワースは、36時間もの間眠り続け、メディアは彼の失踪について憶測を巡らせます。

予備選ではブルワースが圧勝。しかし、大統領選出馬を表明した直後、保険会社の手先であるグラハム・クロケットに銃撃されてしまいます。保険会社はブルワースが推進しようとしていた国民皆保険制度を恐れていたのです。

ブルワースの生死は不明のまま、映画は幕を閉じます。最後のシーンでは、以前出会ったホームレスの老人が病院の外で佇み、ブルワースに「霊」になるよう促す言葉を残します。それは、彼自身の言葉、「歌」を持っている場合のみ可能となる道です。そして、老人は観客にも同じ問いかけを投げかけるのでした。

この映画は、政治家の葛藤、社会問題、人種問題、そして人生の意味といった様々なテーマを、ユーモラスでありながらも深く掘り下げています。ウォーレン・ベイティの演技、そして予測不能なストーリー展開は、観る者を最後まで飽きさせません。政治に疲れた人、ブラックユーモアが好きな人、そして人生について考えさせられる映画を探している人におすすめです。

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