ブロンベルク罷免事件

ブロンベルク罷免事件

ブロンベルク罷免事件（Blomberg-Fritsch-Krise）は、1938年に発生したドイツ国防軍幹部の更迭に関する一連の出来事です。この事件は、ナチス政権が国防軍の上層部を掌握しようとした試みの一環として位置づけられています。

背景

ナチス政権が成立した際、国防軍の将校団には独立性が強かったため、アドルフ・ヒトラーは軍を完全には支配できませんでした。特に、陸軍総司令官のヴェルナー・フォン・フリッチュはプロイセン軍人として高い信頼を受けており、時折ヒトラーをも批判していました。対照的に国防相のヴェルナー・フォン・ブロンベルクは、ナチス政権に対してより協力的でしたが、将校団からは冷ややかな目で見られ、「ゴムのライオン」とあだ名されました。このような環境下で、ヒトラーはブロンベルクを使って軍を掌握しようと試みました。

1937年、ヒトラーは国防軍上層部との秘密会議を開催し、同年内にチェコスロバキアとオーストリアに対する攻撃計画を発表しました。しかし、ブロンベルクとフリッチュはその計画に異を唱え、さらに陸軍の態勢が整っていないことを指摘しました。

経過

ブロンベルクは1937年夏に平民出身の女性エルナ・グルーンと交際を始め、結婚を決意しました。しかし、彼女の悪名高い過去が明るみに出ると、ナチス内部での不安が高まりました。ゲーリングやハイドリヒといった高官たちは、ブロンベルクの結婚を利用して彼を失脚させる計画を練っていました。結婚式は1938年1月12日に行われるものの、その後、エルナと関連したスキャンダルが浮上しました。

一方で、フリッチュも同性愛の疑惑をかけられ、ゲシュタポによる捜査が始まります。この容疑は全く根拠がなかったにもかかわらず、ヒトラーとゲーリングはフリッチュを立場から排除するために動きました。

ナチス党による軍の掌握

ブロンベルクの辞任に際し、ヒトラーは国防相の座を空席とし、その権限を自らに集約しました。軍の統帥権は国防相からヒトラーに移譲され、これにより国防軍の構造も大きく改変されました。創設された国防軍最高司令部は、戦争計画の立案を担うようになり、これまでの陸軍参謀本部の影響は軽減されました。

将軍たちのその後

罷免されたフリッチュは軍法会議で無罪となりますが、その後復職の目はなくなりました。彼は戦場での死を望み、ポーランド戦に参加し、重傷を負いながらも治療を拒否して戦死します。一方、ブロンベルクも復帰を試みますが、ヒトラーから拒絶されました。1946年に彼は癌で亡くなるまで、不遇な時代を過ごしました。

結論

ブロンベルク罷免事件は、ナチス政権による軍の支配を強化するための重要な転機であり、多くの軍人たちの運命を大きく変える要因となりました。

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