ブーヴェ (戦艦)

ブーヴェ (Bouvet)

ブーヴェは、フランス海軍が建造した前弩級戦艦です。フランス海軍では当時、装甲艦と戦艦を区別せず、共に「艦隊装甲艦」と呼称していました。艦名は、フランスの海軍提督フランソワ・ジョゼフ・ブーヴェに由来します。

概要

1890年海軍計画に基づき、フランス海軍は主力艦24隻の配備を目指しました。その一環として10年間で10隻の戦艦が建造され、ブーヴェはその4隻目にあたります。

艦形

ブーヴェの船体形状は、同時代のイギリス前弩級戦艦に見られるタンブルホーム型を採用しています。これは、舷側が水線部から内側に傾斜する形状で、防御力を向上させる効果がありました。艦首と艦尾の形状は一般的なものですが、水線部装甲が舷側甲板よりも突出している点が特徴です。この設計により、甲板面積は前級よりも広く確保されました。

艦首には30.5cm単装主砲塔が1基設置され、その背後には司令塔を組み込んだ艦橋、さらにミリタリーマストが続きます。ミリタリーマストは、敵水雷艇の攻撃に対抗するため、高所に速射砲や機関砲を配置したものです。ブーヴェのミリタリーマストは、内部に階段を持つ円筒状で、頂部には二層式の見張り台がありました。下段の見張り台には、47mm単装速射砲が4基、後部ミリタリーマストにも同様に4基、合計8基が配置されています。

前部ミリタリーマストの後方には、2本の煙突が等間隔に並び、その周囲は艦載艇置き場となっていました。艦載艇は、2番煙突の基部に設けられたクレーンで運用されました。艦載艇置き場の後方には後部ミリタリーマストが設置され、さらにその後ろには30.5cm単装主砲塔が1基配置されています。

ブーヴェの特徴的な兵装配置として、27cm単装副砲塔が船体中央部の張り出し部に片舷1基ずつ計2基、14cm単装砲塔が前後に1基ずつ、主砲塔の左右に1基ずつ、合計8基が配置されていました。この配置により、艦首尾線方向には最大30.5cm砲1門、27cm砲2門、14cm砲4門、左右方向には最大30.5cm砲2門、27cm砲1門、14cm砲4門を指向することができ、強力な火力を発揮しました。

艦歴

第一次世界大戦中、ブーヴェはガリポリの戦いに投入されましたが、1915年3月18日、触雷により転覆・沈没しました。乗員710名中、約660名が戦死するという悲劇的な最期を遂げました。

参考図書

「Conway All The World's Fightingships 1860-1905」（Conway）
「Conway All The World's Fightingships 1906–1921」（Conway）
「世界の艦船増刊第38集　フランス戦艦史」(海人社)

関連項目

フランス海軍艦艇一覧

もう一度検索