プトゥン

プトゥンの生涯と業績

プトゥン（チベット語: བུ་སྟོན་རིན་ཆེན་གྲུབ）は、1290年から1364年にかけて生きたチベット仏教の著名な学者です。彼は、チベット仏教の研究と実践において重要な役割を果たし、その影響は今日に至るまで残っています。プトゥンの生涯は、多くの著作と教義の確立によって彩られています。

教えと指導者

プトゥンは若い頃、トプ翻訳官ヤンツェワ・リンチェンセンゲに師事し、仏教の深い知識を吸収しました。31歳の時、シガツェ近郊のシャール寺の住職に就任しました。彼はこの寺で、仏教経典を新たに訳し加える作業を行うことが特徴でした。特に、ナルタン寺から持ち込んだ仏教経典を基に、シャール寺で新訳経典の作成を行い、カンジュール（仏説部）とテンジュール（論疏部）に分類し、文献目録を作成しました。特にテンジュールの編集には力を入れ、これにより彼の名が広まりました。

プトゥンの影響は、彼の弟子たちによって拡大しました。彼らは新しいサキャ派の支派を創始し、彼が住職を務めていたシャール寺の名にちなんで「シャール派」と呼ばれるようになりました。さらに、シャール寺にはプトゥンの管長就任を祝って地域の王から寄進された仏画群が存在しており、彼の影響力を物語っています。

著作

プトゥンは生涯にわたり、仏教学、歴史、天文学、医学など多岐にわたる206冊の著作を残しました。特に、ダライ・ラマ13世の時代にはその著作が『プトゥン全書』として26巻に編集され、出版されました。

1322年に執筆した『仏教史』は、チベットの歴史学者にとって重要な資料となり、後世にわたってその価値が認識されています。また、1326年には『学者を喜ばせるもの』という暦学の基本書を完成させました。この作品では、従来の暦学に対する批判がなされ、日月や五曜、さらには蝕の計算方法が詳細に記されており、当時の学者たちにとって貴重な資源となりました。

密教四分法の確立

プトゥンは、チベット仏教におけるタントラ経典の分類法である「密教四分法」を確立したことで特に知られています。この分類法は、チベットの密教の発展に大きく寄与しました。具体的には、以下のように分類しました：

• - 所作タントラ：『灌頂経』など
• - 行タントラ：『大日経』など
• - 瑜伽タントラ：『金剛頂経』など
• - 無上瑜伽タントラ：『秘密集会タントラ』、『ヘーヴァジュラ・タントラ』、『カーラチャクラ・タントラ』など

この「密教四分法」は以後のチベット仏教の教義編纂において根本的な役割を果たし、プトゥンの名を仏教界に刻み込みました。

まとめ

プトゥンの業績は、チベット仏教の基礎を築く上で欠かせないものであり、彼の教えや著作は現在でも多くの学者によって研究されています。さらに、彼が確立した教義の分類法は、今後の研究においても重要な参考資料とされ続けるでしょう。プトゥンの生涯と業績は、深い仏教の教えを後世に伝える貴重な遺産となっています。

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