プラスティネーション

プラスティネーション（Plastination）

プラスティネーションとは、人体や動物の遺体、またはその一部（内臓など）の水分と脂肪を合成樹脂と呼ばれるプラスチックに置き換える保存技術を指します。この技術を用いることで、触れることができ、腐敗や悪臭を伴わない標本が作成できます。近年では、プラストミックという名称で呼ばれることもあります。

技術の歴史と応用

このプラスティネーション技術は、ドイツのハイデルベルク大学でグンター・フォン・ハーゲンスによって1978年に開発されました。彼はこの技術を普及させるために、創作展「BODY WORLDS」を1995年に開始し、世界各地で開催しています。また、ハーゲンスは数か国でこの技術の特許を取得し、さらにはプラスティネーション協会を設立して指導を行っています。日本では『人体の世界』や『人体の不思議展』といった特別展にも関与しました。

プラスティネーションのプロセス

プラスティネーションのプロセスは以下の段階で構成されています。この処理は、遺体が死後硬直を始める前の約2時間以内に行う必要があります。

1. ホルマリン処理：遺体を10%のホルマリン溶液に1〜10日間浸し、組織を固定します。
2. 冷凍置換：ホルマリン処理の後、氷点下25度のアセトンに浸して密封し、水分と脂肪を取り除きます。最初の2日間は30%濃度のアセトンを使用し、その後70%に段階的に濃度を上げていきます。
3. 合成樹脂への置換：脱水・脱脂処理が完了したら、遺体を溶媒から取り出し、シリコーン・ポリエステル・エポキシなどの液体樹脂に漬け込みます。この段階では樹脂が十分に染み込むまで24時間浸し、その後硬化剤を加え、さらに2週間漬け込む処理が行われます。
4. 真空処理：樹脂が浸透した遺体を密閉容器に入れ、真空ポンプを使って約1ヶ月間負圧処理を行います。この過程で、残存するアセトンが気化し、樹脂成分が細胞膜内に入り込むことが促進されます。
5. 乾燥：処理が済んだ遺体は、余分な樹脂を取り除いた後、珪酸ソーダを噴霧しながら常温で約3日間乾燥させます。

こうして完成した標本は、解剖学教育や展示会に利用され、科学的な理解を深めるための貴重な資源となっています。プラスティネーション技術は、今日の医療や教育分野において極めて重要な役割を果たしています。なお、この技術の発展により、顕微鏡用切片の作成、さらには個体全体の標本の作製方法として応用されるようになりました。

このように、プラスティネーションは生物学や医学に革新的な進展をもたらし、観衆に人体の構造を理解させる新たな視点を提供しています。

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