プラット・アンド・ホイットニー R-2800

R-2800（ダブルワスプエンジン）

R-2800、一般に「ダブルワスプエンジン」として知られるこの航空用エンジンは、アメリカのプラット・アンド・ホイットニーによって設計されました。これは、空冷の二重（複列）星型の18気筒エンジンであり、第二次世界大戦の最中、多くのアメリカ製の戦闘機や爆撃機に搭載され、その優れた性能で戦局に大きな影響を与えました。

主な特長と性能

R-2800は、特にその大出力を発揮する一方で、二次振動に悩まされるという課題に対して、革新的な解決策を提供しました。エンジンのクランク軸の前後両端には、逆回転するダイナミックバランサーが取り付けられており、この装置が二次振動を打ち消す役割を果たします。この機構による効果により、エンジンは高出力を持ちながらも安定した運転が可能となっていました。

R-2800-CB型の主要諸元は以下の通りです：

• - タイプ: 空冷星型18気筒
• - ボア: 5.75インチ（146mm）
• - ストローク: 6インチ（152mm）
• - 全長: 81.4インチ（2,068mm）
• - 直径: 52.8インチ（1,341mm）
• - 排気量: 45.9リットル（2,800立方インチ）
• - 乾燥重量: 2,350ポンド（1,066kg）
• - 過給機: 遠心式スーパーチャージャー1段2速
• - 燃料供給方式: キャブレター
• - 離昇馬力: 2,400Bhp（1,790kW）

このエンジンは、戦時中にアメリカの航空機産業において欠かせない存在となり、F4Uコルセア、P-47サンダーボルト、F6Fヘルキャットなどの主要な戦闘機に搭載されました。また、A-26インベーダーなどの爆撃機にも使用され、その能力と信頼性によって多くの戦果を上げました。

生産と採用量

R-2800は、1939年から1960年の間に125,334機が生産され、多くの航空機メーカーに支持されました。具体的には、Aero Nord、Aero Sud-Ouest、Bell、Breguet、Brewster、Chase、Consolidated Vultee、Eastern、Fairchild、Hughes、Sikorsky、Stroukoff、Warwick、Vulteeなど、さまざまな企業がこのエンジンを採用しました。

ワスプシリーズ

R-2800は、プラット・アンド・ホイットニーのワスプエンジンシリーズの一部であり、他にも以下のモデルが存在します:

• - R-1340 ワスプ
• - R-985 ワスプ・ジュニア
• - R-1535 ツインワスプ・ジュニア
• - R-1830 ツインワスプ
• - R-4360 ワスプ・メジャー

これらのエンジンも同様に航空機に搭載され、それぞれ異なる目的と性能特性を持っていました。R-2800はその多様性と信頼性から、戦後も様々な航空機に使用され続け、航空機エンジンの歴史に名を刻んでいます。

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