プリシラ・スーザン・ビューリー

プリシラ・スーザン・ビューリーは、1799年1月12日にイギリスで生まれ、1872年3月8日にこの世を去った植物学者にして、類まれな才能を持つ植物画家でした。リバプールの富裕な商人の家庭に生まれた彼女は、恵まれた環境の中で育ち、幼い頃から植物への深い関心を抱き、その豊かな才能を開花させていきました。

1830年、ビューリーは著名な鉄道技術者であったエドワード・ビューリーと結婚します。結婚後も彼女は植物画への情熱を燃やし続け、その才能はさらに研鑽されていきます。特に、銀行家でありアマチュア植物学者としても知られていたウィリアム・ロスコーとの協働は、彼女の植物学におけるキャリアに大きな影響を与えました。

ロスコーとの協力関係の中で、ビューリーは1831年から1834年にかけて『六雄蕊植物選』(A Selection of Hexandrian Plants)という植物図鑑を出版しました。この図鑑は、単なる植物図鑑の枠を超えた、豪華で希少な作品として知られています。ビューリー自身の精緻で美しい植物画が中心となり、版画は著名な版画家ロドナー・ロバート・ヘイヴェルが担当しました。ヘイヴェルは、かの有名なジョン・ジェームズ・オーデュボンの著作においても版画制作に携わった、当時名声のあった職人でした。

『六雄蕊植物選』では、アクアチントという腐食銅版画法が用いられ、350種類以上の植物が美しく再現されています。さらに、多くの植物画には部分的な手彩色が施され、その豪華さは他に類を見ません。大型フォリオ版で制作されたこの図鑑は、ランカシャーを中心に販売されましたが、その希少性から79部しか売れなかったと言われています。しかし、その美しさは高く評価され、オーデュボン自身も購入者の一人だったと伝えられています。

ビューリーの植物画の才能は、『六雄蕊植物選』だけにとどまりません。彼女は、ベンジャミン・マウンドが刊行した植物雑誌『The Botanist』にも図版を提供しています。これらの作品からも、彼女がいかに植物の細部を丁寧に観察し、それを正確かつ美しく表現することに長けていたかがわかります。

残念ながら、『六雄蕊植物選』は限定的な部数しか販売されませんでしたが、ビューリーの作品は、現代においても植物画の歴史において重要な位置を占めています。彼女の精緻な観察眼と卓越した画技は、後世の植物画家たちに多大な影響を与え、現在もなお、多くの人々を魅了し続けています。ビューリーの作品は、単なる植物図鑑ではなく、植物への深い愛情と探求心、そして芸術家としての高い技量を融合させた、かけがえのない遺産と言えるでしょう。彼女の植物画を通して、私たちは19世紀の植物学の世界に深く入り込み、自然への畏敬の念を新たに感じることができるのです。 ビューリーの作品は、現在でも植物学や植物画の研究者、愛好家にとって貴重な資料として活用されています。彼女の生涯と業績は、科学と芸術の融合という点において、後世に大きな影響を与え続けています。

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