プリスクス・アッタルス

プリスクス・アッタルス：二度の対立皇帝

プリスクス・アッタルス（生年不詳 - 416年以降）は、西ローマ帝国の混乱期に、西ゴート族の支援を受けて二度にわたり皇帝ホノリウスの対立皇帝となった人物です。彼はギリシア出身であり、その出自、皇帝としての経緯、そしてその後の運命は、当時の西ローマ帝国の政治情勢を色濃く反映しています。

生い立ちと元老院議員としての活躍

アッタルスは東ローマ帝国から移住してきたギリシア人であり、彼の父はウァレンティニアヌス1世の時代にイタリアに移住しました。アッタルスはローマ帝国の重要な元老院議員として、409年には首都長官（プラエフェクトゥス・ウルビ）の職にありました。この地位は、彼がローマ社会において一定の地位を確立していたことを示しています。

一度目の皇帝即位（409年 - 410年）

409年、アッタルスは元老院によってローマで皇帝として宣言されました。これは、西ゴート族の王アラリック1世がローマを包囲し、ホノリウス帝に対する圧力を強める中で起こりました。元老院は、ラヴェンナに拠点を置くホノリウス帝の権威を否定し、新たな皇帝を擁立することで、事態の打開を図ろうとしたと考えられます。

ホノリウス帝は、アッタルスを共同皇帝として認める条件で講和を提案しましたが、アッタルスはこれを拒否し、ホノリウス帝との決戦を主張しました。ローマやメディオラヌムといった帝国内の人々はアッタルスを支持しましたが、ホノリウス帝との交渉を望んでいたアラリック1世によって、アッタルスは廃位されました。この短期間の皇帝在位は、アッタルス自身の政治的野心とともに、当時の西ローマ帝国の分裂と混乱を象徴しています。

二度目の皇帝即位（414年 - 415年）

アッタルスが再び歴史の表舞台に登場するのは、414年のことです。西ゴート族の王となったアタウルフは、ローマ帝国の再建を表明し、ボルドーでアッタルスを再びローマ皇帝として擁立しました。しかし、アタウルフは翌415年に暗殺され、アッタルスの二度目の皇帝としての地位も終わりを迎えました。アタウルフの死は、西ゴート族の内部対立を激化させ、アッタルスの後ろ盾を失わせる結果となりました。

捕囚と流刑、そして晩年

アッタルスはホノリウス帝派によって捕らえられ、捕囚の身となりました。416年には、ローマ市街で行われたホノリウス帝の凱旋式に、捕虜として参加させられるという屈辱を味わいました。その後、リーパリ島へ追放され、そこで最後の日々を送ったと伝えられています。二度の皇帝即位という栄光から一転、捕虜となり流刑地で生涯を終えるという彼の運命は、時代の波に翻弄された人物の悲哀を物語っています。

プリスクス・アッタルスの生涯は、西ローマ帝国の衰退期における政治的駆け引き、民族間の対立、そして個人の運命が複雑に絡み合った結果と言えるでしょう。

外部リンク

* Elton, Hugh, "Attalus (409-410, 414-415 A.D.)", De Imperatoribus Romanis

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