プリニウス (漫画)

『プリニウス』: ヤマザキマリととり・みきの歴史漫画

『プリニウス』は、ヤマザキマリととり・みきによる日本の歴史漫画で、古代ローマの著述家であるプリニウスを取り上げています。紀元1世紀のローマ帝国に生きた彼は、総合的な博物学の書『博物誌』を著したことで知られています。本作は彼の人生や思想、冒険を多彩なキャラクターと共に描いています。

2014年に『新潮45』にて連載が開始され、その後『新潮』に移籍し、2023年に完結を迎えました。また、同作は2018年からWebコミック『くらげバンチ』でも配信され、幅広い読者に親しまれています。

プリニウスと『博物誌』の世界

プリニウスが著した『博物誌』は、動植物、天文地理、文化技術など、古代世界の全貌を網羅的に記述した大著であり、非科学的な内容も多いことから、近世以降はしばしば批判を受けてきました。しかし、ヤマザキととりは、科学性に囚われることなく、自然現象や神秘的な存在を等しく受け入れる彼の姿勢を評価しています。この効用は、彼らの漫画においても反映されています。

作中では、プリニウスが遭遇する幻想的な生物たちが実際に描かれ、彼の探求心がはぐくむ知識の旅が展開されます。

ストーリーの概要

物語は、紀元79年のウェスウィウス山の大噴火から始まります。主人公のプリニウスは、その壮大な自然の現象を観察するために、早足で現地を視察します。そばには彼の書記エウクレスがいます。かつてエトナ山の噴火で家を失ったエウクレスは、プリニウスの博識に魅了され、彼の口述記録を担当するようになります。

一方で、ローマでは暴君ネロの治世が続き、恐怖政治による混乱が広がっていました。プリニウスは、宮廷での醜悪な政争に巻き込まれながらも、その知識と探求心をもって、ネロの暴政から逃れるための旅に出ます。

冒険の先に待ち受けるもの

プリニウスとその従者たちは、地中海を航行し、アフリカのカルタゴへと向かいます。未開の地で新たな知識を求め、彼らは様々な出来事や人々と遭遇し、時には幻獣とも対峙します。その旅の中で、プリニウスは人間の愚かさや自然の驚異に直面し、未知の世界との関わりを深めていくことになります。

制作の背景と受賞歴

本作は、ヤマザキが以前からプリニウスに興味を抱いていたことがきっかけで生まれました。彼女は古代ローマの自然災害をテーマに、プリニウスを主役に据えたストーリーを考えました。制作にあたり、二人は互いの強みを生かし、独自の視点で作品を完成させています。

『プリニウス』は、その独特の視点と魅力から、文化庁メディア芸術祭や手塚治虫文化賞など、数々の受賞歴があり、多くの読者に愛されています。

登場人物の魅力

本作には、博物学者プリニウスをはじめ、彼の書記エウクレスや護衛兵フェリクスなど、多彩なキャラクターが登場します。彼らの個性は物語をより深くする要素となっています。特にプリニウスの飽くなき学問への探求心は、読者に強い影響を与え、彼の方針や行動に共感を抱かせています。

この作品は、歴史や科学を愛する読者のみならず、幻想的な世界を楽しむすべての人々に深い感動を与えることでしょう。

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