プレゼンティーイズム

プレゼンティーイズムの概念と影響

プレゼンティーイズム（Presenteeism）とは、病気であるにもかかわらず仕事を続けることを指します。この行動は、個々の健康状態の悪化や生産性の低下、さらには職場での感染症拡大といった問題を引き起こす可能性があります。近年、経営学の研究において欠勤（アブセンティーイズム）に関する研究は進んできましたが、プレゼンティーイズムに関する研究はまだ発展途上です。

特に、福祉や教育職など、特定の職業に従事している方々はプレゼンティーイズムに陥りやすい傾向が見られます。例えば医療従事者は、代わりの人がいないことにより、病気であっても勤務を続けることが一般的です。また、過重な業務負担が掛かっている仕事も、同様の傾向を生む要素となります。自己評価が成果に結びつく傾向がある人々は、ワーカーホリックに似て、高いプレゼンティーイズムの傾向を示します。

プレゼンティーイズムの要因

プレゼンティーイズムが生じる背景には多様な要因があります。多くの従業員が病気でも働く理由には、経済的な必要性や、病気休暇の取得が困難であることが含まれます。また、仕事への誇りや献身から出勤する場合もあり、この場合は、組織の一員としての行動が賞賛されることもあります。他にも、休暇を取得することで自身のキャリアに悪影響を及ぼすのではないかという恐れや、経営陣からの評価を期待しての行動もあります。興味深いことに、日本では男性と女性でプレゼンティーイズムの原因が異なるという報告も存在しています。

プレゼンティーイズムによる影響

生産性の低下

プレゼンティーイズムは、生産性の低下を引き起こす要因の一つです。多くの研究者がその数値的な評価に取り組んできました。その結果、健康上の問題がないときと比較して、生産性が低下することが明らかとなっています。欠勤と比較した場合、プレゼンティーイズムの方が経済的な影響は小さいものの、米国における大規模調査によれば、平均的なコストは約255ドルであると推定されています。さらに、健康関連の総コストの中で20%から60%がプレゼンティーイズムによる生産性低下に起因しているとも言われています。

健康状態の悪化

プレゼンティーイズムは、体調不良や疲労の増大につながる可能性もあります。研究によっては、病気で勤務することが、のちに病気休暇を取るリスクを高めることが報告されています。また、過重な勤務がこれに拍車をかけることがあるため、職場での健康管理が重要視されています。

職場での感染症の蔓延

さらに、インフルエンザなどの感染症の蔓延においても、プレゼンティーイズムの文化が深刻な影響を及ぼすことがあります。カナダの調査では、病気で出勤した人の80%以上が職場で感染したと回答しています。これにより、職場全体に伝染病が広がる可能性が高まります。

日本におけるプレゼンティーイズムへの対策

日本では、感染症法や労働安全衛生法に基づき、感染症の就業に関する規範があります。感染症法では、知事が感染症に応じて業務を制限でき、労働安全衛生法においても事業者は医師の意見に基づき勤務を拒否する必要があります。

まとめ

プレゼンティーイズムは単なる職場の文化ではなく、健康や生産性に多大な影響を及ぼす課題です。従業員の出勤状況や職場環境を見直し、労働者が安心して休暇を取れる制度や文化を築くことが、企業全体の健康と生産性を向上させる鍵になるでしょう。

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