ヘッセン＝マールブルク方伯領

ヘッセン＝マールブルク方伯領

ヘッセン＝マールブルク方伯領は、15世紀から17世紀にかけてヘッセン地方に存在した神聖ローマ帝国の領邦です。その短い期間の中で、領地の分割と再統合、そして相続をめぐる激しい争いが繰り広げられました。

成立と変遷

1458年、ヘッセン方伯ルートヴィヒ1世の死後、その領地は二人の息子、ルートヴィヒ2世とハインリヒ3世によって分割されました。ルートヴィヒ2世が下ヘッセン（ヘッセン＝カッセル）を統治する一方、ハインリヒ3世はマールブルクを首都とする上ヘッセンを受け取り、ここにヘッセン＝マールブルク方伯領が成立しました。

しかし、この家系は長くは続きませんでした。1500年、ハインリヒ3世の息子ヴィルヘルム3世が嗣子なく死去したことで断絶し、方伯領はルートヴィヒ2世の息子ヴィルヘルム2世のもとでヘッセン方伯領として再び統合されました。

その後、ヘッセン方伯フィリップ1世は、遺言で最初の結婚で生まれた4人の息子に遺産を分割することを命じました。その結果、1567年に次男ルートヴィヒ4世がオーバーヘッセン、いわゆる「ラーンの土地」で方伯領の約4分の1を受け取り、再びヘッセン＝マールブルク家が創設されました。ルートヴィヒ4世はマールブルク城に居を構え、領地の拡大に尽力しました。具体的には、イッター、ビンゲンハイムの一部、ブッツバッハの4分の1、リスベルクとウルリヒシュタイン、ロラーの裁判所、ホイヒェルハイム、ロトハイム、フェリングスハウゼン、リンデンなどを領地に加えました。さらに、ローゼンタール、バッテンベルク、メルナウ、ヴェッターの半分、シェーンシュタイン地区の一部、ビュゼック渓谷なども相続によって獲得しました。

しかし、1604年、ルートヴィヒ4世が子供のないまま亡くなると、ヘッセン＝マールブルク方伯領は再び消滅の危機に瀕しました。

マールブルクの継承争い

ルートヴィヒ4世の死後、その領土は二人の甥、ヘッセン＝カッセル方伯とヘッセン＝ダルムシュタット方伯に分割相続されることになりました。ただし、ルター派を維持することが条件とされました。しかし、ヘッセン＝カッセル方伯モーリッツがカルヴァン派に改宗したことが、両家の対立を激化させ、何十年にもわたる相続争いへと発展しました。

三十年戦争（1618年 - 1648年）では、両方伯は敵として戦い、領地を巡って激しい攻防を繰り広げました。1627年には入植が行われるなど、混乱は極みに達しました。最終的に、ヘッセン＝ダルムシュタットがヘッセン＝マールブルクの旧方伯領の過半数を獲得しましたが、これは更なる紛争の火種となりました。ヘッセン戦争と呼ばれる二つのヘッセン領邦間の軍事衝突が勃発し、事態は泥沼化しました。

この対立は、1648年4月14日にようやく条約が締結され、終止符が打たれました。ヴェストファーレン条約によってその内容が確認され、ヘッセン＝カッセルはヘッセン＝マールブルクの約4分の1を「首都」マールブルクとともに受け取り、残りの領地はヘッセン＝ダルムシュタットの手に остался。ヘッセン＝ダルムシュタットの「首都」はギーセンとなりました。

その後

19世紀になると、ヘッセン選帝侯領の上ヘッセン州とヘッセン大公国の上ヘッセン州という二つの州が、かつてのヘッセン＝マールブルク方伯領の領地に置かれました。この地域は、歴史的な経緯から、政治的、文化的に複雑な様相を呈していました。

以前の上ヘッセンの方伯領

ヘッセン＝マールブルクが成立する以前にも、上ヘッセンには方伯領が存在していました。1308年、初代ヘッセン方伯ハインリヒ1世の息子たちが領地を分割相続し、オットー1世がマールブルク周辺の上ヘッセン方伯領を、異母弟ヨハンがカッセル周辺の下ヘッセン方伯領を受け取りました。しかし、1311年にヨハンが死去した後、二つの方伯領はオットー1世によって再び統一されました。

このように、ヘッセン＝マールブルク方伯領は、ヘッセン地方の歴史において、領地の分割、再統合、そして相続争いという複雑な問題を象徴する存在と言えるでしょう。

参考文献
Schmidt, Arthur Benno (1893). Die geschichtlichen Grundlagen des bürgerlichen Rechts im Großherzogtum Hessen. Giessen: Curt von Münchow

外部リンク
Hessen-Marburg 1567 bis 1604

関連項目
* ヘッセンの統治者一覧

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