ヘリウムネオンレーザー

ヘリウムネオンレーザーとは

ヘリウムネオンレーザー（He-Neレーザー）は、ヘリウムとネオンの混合気体を媒質として使用する気体レーザーの一種です。1960年代に開発されて以来、長らく可視光レーザーとして科学研究や産業分野で広く利用されてきました。特に赤色の可視光を発光するレーザーとして知られています。

歴史

ヘリウムネオンレーザーの歴史は、1960年にベル研究所のAli Javan博士らがヘリウムネオン気体を用いたレーザー発振に成功したことから始まります。これは、連続的に光を発振する最初のレーザーであり、当時の科学技術に大きなインパクトを与えました。1963年には、Spectra Physics社がHe-Neレーザーの商業販売を開始し、その普及を加速させました。

2000年代初頭までは、He-Neレーザーは汎用的な可視光レーザーとして広く利用されてきましたが、可視域の半導体レーザーの普及に伴い、その利用は徐々に減少しています。しかし、現在でも特定の用途において、その特性が活かされています。

特徴

He-Neレーザーは、気体レーザーの中でも中性原子レーザーの代表的な例です。レーザーとしては比較的出力が小さい部類に入りますが、その特性から以下のような特徴を持っています。

発光波長: 主に632.8nmのネオン（Ne）線の赤色光を発振します。ただし、正確には632.816nmです。この波長の光は、非常に安定した単色光であり、精度の高い測定や光学実験に利用されます。
小型・安価: He-Neレーザーは、他のレーザーに比べて小型で安価であるため、様々な用途に利用しやすいです。また、レーザー装置の光軸調整など、光学系の初期設定にもよく使用されます。
4準位レーザー: He-Neレーザーは、ヘリウムとネオンの混合気体を10:1の割合で使用する4準位レーザーです。この構成により、効率的なレーザー発振を実現しています。
放電励起: レーザー発振には、放電励起による二段階の光ポンピング法が用いられます。まず、放電によってヘリウム原子が励起され、次に、そのエネルギーがネオン原子に伝達されることで、ネオン原子がレーザー発振に必要な状態になります。

その他の発光波長

一般的に、ヘリウムネオンレーザーといえば赤色（632.816nm）を指しますが、実際には他の波長も発振可能です。主なものとして、緑色（543.365nm）、黄色（593.932nm）、オレンジ色（611.802nm）、近赤外（1523nm、3391nm）などがあります。しかし、これらの波長のレーザーは、赤色レーザーほど一般的ではありません。

まとめ

ヘリウムネオンレーザーは、その歴史と特性から、現代でも特定の分野で重要な役割を果たしています。特に、赤色レーザーの安定性や使いやすさは、光学系の調整や精密測定において依然として価値があります。技術の進歩により新しいレーザーが登場していますが、He-Neレーザーの基本的な原理と特性を理解することは、光学技術を学ぶ上で非常に重要です。

参考文献

「レーザー物理入門」霜田光一著　岩波書店
「光化学のためのレーザー分光・非線形分光法」山崎巌著　講談社

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