ベアードバク

ベアードバク：中央アメリカの森に生きる影

ベアードバク( Tapirus bairdii) は、中央アメリカに生息するバク科の哺乳類です。別名、チュウベイバクとも呼ばれています。エクアドル、エルサルバドル、グアテマラ、コスタリカ、コロンビア、ニカラグア、パナマ、ベリーズ、そしてメキシコ南部といった、中央アメリカ地域に広く分布しています。

大きさと見た目

体長は180～250cm、肩高は100～120cmにもなり、体重は150～300kgに達します。全身は、濃い茶色や黒色の体毛で覆われていますが、顔や喉の部分の体毛はやや淡い色をしています。ずんぐりとした体躯と短い鼻が特徴的で、他のバク類と同様に、水辺を好みます。

生態：夜行性で孤独な生活

ベアードバクは、標高3350mまでの森林、草原、沼地、湿地など、様々な環境に適応して生活しています。水辺を好んで生息し、水浴びをする姿も見られます。泳ぎも得意で、危険を感じると水中に逃げ込む習性があります。


彼らは群れを作らず、基本的に単独で生活する夜行性の動物です。昼間は茂みの中などで休んで過ごし、夜になると活発に活動し始めます。食性は植物食で、草、木の葉、果実などを食べて生活しています。


繁殖期になると、メスは妊娠期間390～405日を経て、一度に一頭の幼獣を産みます。幼獣は母親と約1年間一緒に過ごし、授乳期間を経て独立します。

人間との関わりと現状

残念ながら、ベアードバクは人間活動の影響を大きく受けています。生息地の開発による森林破壊や、食用目的での乱獲が、個体数減少の大きな原因となっています。


地元住民の中には、ベアードバクを食用とする文化を持つ地域もあり、持続可能な利用方法の確立が課題となっています。また、生息地の保護と保全活動の推進が、この貴重な動物の未来を守るために不可欠です。

保全への取り組み

ベアードバクの個体数減少を食い止めるため、国際的な保護活動が進められています。IUCNレッドリストでは、絶滅危惧種に指定されており、生息地の保護、違法な狩猟の取り締まり、そして地域住民との協働による保全計画の策定などが重要な取り組みとなっています。


今後の研究と保護活動の継続により、この魅力的な動物が、これからも中央アメリカの豊かな自然の中で生き続けることができるよう、国際的な協力体制の構築が求められています。


参考文献


小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『レッド・データ・アニマルズ3 中央・南アメリカ』、講談社、2001年
『小学館の図鑑NEO 動物』、小学館、2002年


外部リンク


CITES homepage
Appendices I, II and III
IUCN 2008 Red List - Home Page
Castellanos, A., Foerester, C., Lizcano, D.J., Naranjo, E., Cruz-Aldan, E., Lira-Torres, I., Samudio, R., Matola, S., Schipper, J. & Gonzalez-Maya. J. 2008. IUCN 2008 Red List - Tapirus bairdii. IUCN 2008. 2008 IUCN Red List of Threatened Species.

もう一度検索