ベクター・W8

W8: ベクター・モーターズ社初の量産スーパーカー

W8は、アメリカのベクター・モーターズ社によって製造された自動車で、同社が手掛けた初の量産車として知られています。この車両の設計は、創設者であるジェラルド・ウィーガートとデビット・コストカによって行われました。W8の発表は1988年で、これは1978年に披露されたプロトタイプW2の10年後の出来事となります。W2は市販化に至らず、その後の開発はW8に向けた技術的な基盤となりました。

W8は、高度な航空技術を取り入れた設計で、シャシはアルミモノコックを採用し、ボディにはカーボンケブラーが使用されています。このような素材選びは、軽量化と剛性を両立させるためのこだわりの表れです。エンジンは、シボレー製V型8気筒OHVを基にカスタマイズされ、ギャレット製のツインターボチャージャーが装備されています。このエンジンは高出力を発揮するために特別に調整され、トランスミッションにもシボレー用の3速ATを採用しており、その組み合わせによって圧倒的なパフォーマンスを実現しました。

具体的な性能数値では、W8は0-60マイル（約0-100 km/h）加速をわずか4.2秒で達成し、推定最高速度は220マイル（354 km/h）以上となっています。実際には、その基になったW2プロトタイプは、ボンネビル・ソルトフラッツでのテストにおいて最高速242マイル（389 km/h）に達したとされています。このため、W8は当時の自動車雑誌「ロード＆トラック」によって、世界最速の生産車としての評価を受けました。

発売の計画は1988年に立てられていましたが、当時のアメリカ国内の法規制に適合するために多くの修正が必要となり、実際のデリバリーは1990年にずれ込みました。量産が始まるまでに、ミラーやノーズ形状、グリル、リアスポイラーの設計に関する変更が行われました。生産はカリフォルニア州ウィルミントンの工場において、すべてハンドメイドで実施されましたが、ベクター社の資金難により生産数は限られ、わずか19台が完成しただけでした。このうち、実際に市販されたいくつかの車両は、レース用のプリプロダクションモデルやプロトタイプとして使用されることとなりました。興味深いことに、製造された19台中の2台は日本に輸入され、一台はウォルター・ウルフ・レーシングが所有しています。

W8は、その先進的な技術と斬新なデザイン、さらに制限された生産台数により、スーパーカー愛好家の間で特別な地位を占めています。自動車の世界では、このような独自の歴史と性能を持つ車両は非常に稀であり、W8は今もなお多くの人々に記憶され、語り継がれる存在であるのです。

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