ベサ機関銃

ベサ機関銃：イギリス戦車部隊を支えた重機関銃

ベサ機関銃は、第二次世界大戦においてイギリス軍の戦車や装甲車に広く搭載された重機関銃です。その起源は、チェコスロバキアのZB-53機関銃（チェコ軍呼称：TK Vz.37）に遡ります。イギリスは、チェコスロバキアの武器メーカーであるČeskoslovenská zbrojovka社とライセンス契約を結び、この機関銃を生産しました。BSA社がその生産を担ったことから、この機関銃は「ベサ」という名称で呼ばれるようになりました。

ベサ機関銃は、空冷式でベルト給弾式という構造が特徴です。設計者であるVaclav Holekによる優れた設計は、高い信頼性と確実性を約束しました。水冷式のヴィッカース重機関銃に比べて軽量で扱いやすいため、機甲部隊にとって理想的な装備となりました。搭載にあたっては戦車の装甲に大きな開口部が必要でしたが、その信頼性はそれを補って余りあるものでした。

当初、ZB-53はドイツ製の8x57mm IS弾薬を使用するように設計されていましたが、イギリス軍は.303ブリティッシュ弾を採用していました。両弾薬は構造が異なり、容易に互換性を持たせることはできませんでした。しかし、戦争の緊急性から弾薬の変更は行われず、ベサ機関銃は8x57mm IS弾薬を使用することになりました。緊急時には、ドイツ軍から鹵獲した弾薬を使用することも可能でした。

ベサ機関銃は、改良を重ねていくうちに複数のモデルが登場しました。マークII型では、セレクターによって発射速度を切り替える機能が追加され、高発射率では毎分800発、低発射率では毎分500発の射撃が可能になりました。マークIII型では、生産性を高めるための設計変更が行われ、発射速度モデルがL（低発射率）とH（高発射率）に区分されました。

より大口径のバージョンとして、15mm口径のベサ機関銃も開発されました。これはチェコスロバキアのZB vz.60重機関銃をベースとしており、BSA社によって生産されました。重量は57kgと重く、Mk.VI軽戦車C型やハンバー装甲車マークIIIなど、大型の装甲車両に搭載されました。

第二次世界大戦後、イギリス軍はベサ機関銃をNATO標準の7.62mm口径のブローニングM1919重機関銃に置き換えていきました。ブローニングM1919重機関銃は、アメリカ軍がレンドリースで供給した戦車に搭載されていて、その性能が評価されていたためです。

ベサ機関銃は、第二次世界大戦中のイギリス軍戦車部隊にとって重要な装備であり、その信頼性と性能は、多くの戦場で実証されました。チェコスロバキアの優れた技術とイギリスの生産能力が融合した結果、生まれたこの機関銃は、イギリス軍の戦車戦術に大きく貢献したといえるでしょう。また、その発展の歴史は、兵器開発における技術革新と戦争の要求との複雑な関係を如実に示しています。

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